マネからプッシー・ライオットまで。4月号新着ブックリスト(1)
雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。第一弾では、現代美術にまで及ぶマネの影響力を多角的に読み解く論考から、ロシアのアクティヴィスト集団「プッシー・ライオット」のメンバーの著書まで、『美術手帖』4月号に掲載された注目の新刊を3冊ずつ紹介する。
『リフレクション─ヴィデオ・アートの実践的美学』
インターネット上の動画や街頭広告の映像があふれかえる現在、文化的事象への批判的機能を散逸させつつあるヴィデオはどのような可能性を持ち得るのか。ヴィデオ・アーティストである著者が実践者ならではの視点も取り入れて展開するヴィデオの美学的考察。ヴィデオの技術的原理を確認したうえで、アナログ/デジタルの特性、データが持つ反省的性格などを検証する。後半ではヴィト・アコンチ、飯村隆彦、ナム・ジュン・パイクらの具体的な実践を取り上げる。(中島)
『リフレクション─ヴィデオ・アートの実践的美学』
河合政之=著
水声社|3800円+税
『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』
マネと言えば近代絵画の黎明期に活躍した巨匠のひとりだが、著者によればそのポテンシャルはまだ十分に語り尽くされていない。スペインやイタリアの古典絵画を継承しつつ、他方でその伝統性を裏切る独自の美術史解釈、アッサンブラージュ的とも言える斬新な画面構成、セザンヌ、ゴーガンら同時代の画家との共通点や差異。印象派の前身という以上の革新性を多角的に解き明かしたマネ論。現代アートにまで及ぶマネの影響力を存分に確認できる1冊。(中島)
『エドゥアール・マネ西洋絵画史の革命』
三浦篤=著
KADOKAWA|2000円+税
『プッシー・ライオットの革命 自由のための闘い』
昨年開催されたサッカーW杯決勝戦での乱入事件も記憶に新しい、ロシアのアクティヴィスト集団「プッシー・ライオット」。猥雑でゲリラ的な活動を展開する彼女らは、ときに犯罪者やアナーキストのように映るが、実際はリベラルな知識層の代弁者である。その中心メンバーである著者が、2012年に仕掛けたロシア正教会大聖堂での反体制ライブから、不条理な裁判、収容所生活までを赤裸々に語る。プーチン大統領が独裁色を強めるなか、圧力を恐れずに女性の人権を叫び続けるパンクな1冊だ。(近藤)
『プッシー・ライオットの革命 自由のための闘い』
マリヤ・アリョーヒナ=著
DU BOOKS|2000円+税
(『美術手帖』2019年4月号「BOOK」より)