ポスト印象派の画家からアーティストのドキュメンタリー、ナチスドイツの美術まで。チェックすべきAmazon Prime Videoのアートムービー
スマートフォンやパソコンで、いつでも見たい動画コンテンツを視聴できることから近年注目を集めるストリーミングサービス。今回はAmazon Prime Videoで見られるおすすめのアートムービーを紹介。連休中に自宅で過ごす時間のお供にいかがだろうか。配信期限つきの作品もあるため、気になるものは早めのチェックをおすすめしたい。
映画が物語るポスト印象派の画家たち
まず、紹介したいのがポスト印象派の作家をあつかったり、作風に影響を受けて制作された作品だ。
『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』
フィンセント・ファン・ゴッホの死後、ほぼ無名だったその作品に出会い、個人コレクターとしては最大規模の約300点を収集して、一大コレクションを築いた女性、ヘレーネ・クレラー=ミュラー。そのミュラーの視点を通して、ゴッホの人物像と作品に迫るドキュメンタリー映画が『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』(2019)だ。今年9月より東京都美術館での開催が予定されている「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」も、このミュラーのコレクションに焦点を当てた展示なので、本作で予習してはいかがだろうか。
『永遠の門 ゴッホの見た未来』
ゴッホの孤独でドラマティックな人生を映像化した『永遠の門 ゴッホの見た未来』(2019)にも注目だ。本作の監督、ジュリアン・シュナーベルは自身も画家であり、『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)を手がけたことでも知られ、ゴッホを演じるのは『スパイダーマン』(2002)などで知られる俳優、ウィレム・デフォー。南仏・アルルへ向かうところからスタート。ゴーギャンとの生活や決別を経てその生涯を閉じるまでを追い、ゴッホが生涯をかけて伝えようとした「この世の美しさ」とは何かを探る。
『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』
一時はゴッホと志を同じくしながらも、やがて袂を分かつことになったポール・ゴーギャンに焦点を当てた作品がエドゥアルド・デルック監督『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』(2017)だ。画家として名をなしながらも、作品が売れず行き場を失っていたゴーギャンは、絵画制作の場をフランス領タヒチに求めてひとり旅立つ。ゴーギャンが島の奥地の森で少女・テフラと運命の出会いを果たす。代表作を次々に生み出していくゴーギャンだが、やがてこの地でもゴーギャンを苛む苦悩の日々を描く。
『セザンヌと過ごした時間』
近代絵画の父と称されるポール・セザンヌと、文豪エミール・ゾラの40年にわたる友情を描いた作品が、ダニエル・トンプソン監督『セザンヌと過ごした時間』(2017)だ。少年時代に出会ったセザンヌとゾラ。境遇こそ異なるがともに芸術を志すふたりは、夢を語り合い成長してきた。やがてゾラは小説家として成功を収めるが、セザンヌはなかなか評価されず落ちぶれていく。そんな折、ゾラが画家をモデルにした小説を発表したことで、2人の友情に亀裂が入る。
アーティストの個性や技術を見る
作品をつくりあげるアーティストの制作に迫るドキュメンタリー映画。画材の使い方から、発する言葉まで、映像だからこそ伝わる作家の世界観を堪能してほしい。
『ミステリアス・ピカソ - 天才の秘密』
アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督による、1958年の生前のパブロ・ピカソを追ったドキュメンタリー映画『ミステリアス・ピカソ - 天才の秘密』。ピカソが絵画を制作する様子を堪能できるだけでなく、印象的な陰影によってピカソの天才性を印象づける美しい画面づくりにも注目したい。実験的大作に向かい合うときの鋭い眼光や、色を塗り重ねる際の思考の流れなど、ピカソがいかに作品をつくりあげていったのかを垣間見ることができる1本だ。
『何も変わらない-ハンクとして芸術家の魂』
毎日、ニューヨークにあるスタジオに通勤して制作を続けるアーティスト、ハンク・ヴァルゴナを追ったドキュメンタリーが『何も変わらない-ハンクとして芸術家の魂』だ。ヴァルゴナはすでに癌に侵され、収入も少なく、芸術家として無名な87歳のアーティスト。しかし、日々の生活を生きることと、芸術を生み出すことが一体となっている彼は、今日も淡々と作品と対峙する。芸術を出発点に、「いかに生きるか」という人生の意味をも考えさせられる作品だ。
ナチスドイツが翻弄した芸術の歴史の物語
ナチスドイツ政権下では、芸術家も様々な弾圧を受けた。抽象美術、表現主義、バウハウスなどを「退廃芸術」として迫害。また、美術品の略奪も組織的に行っていた。ナチスに翻弄された人々を描くとともに、改めて今日の「表現の自由」を考える契機にもなる作品を紹介する。
『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
ナチス・ドイツが略奪した芸術品の総数は約60万点にのぼり、今でも10万点が行方不明と言われる。なぜナチス、そしてヒトラーは美術品略奪に執着したのか?『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』で描かれるのは、ピカソ、ゴッホ、ゴーギャンらの傑作に「退廃芸術」の烙印を押し、一方で古典主義的な作品を擁護したナチスの歪んだ芸術への姿勢だ。権力は芸術をも支配できると妄信するナチスが行った歴史上最悪の美術品強奪と破壊、そしてヒトラーの秘宝たちが辿った知られざる真実とは?
『ナチスの愛したフェルメール』
ナチスドイツの高官にフェルメールの絵画を売ったために捕らえられた実在の天才贋作画家ハン・ファン・メーヘレンの数奇な半生を描いた伝記ドラマが『ナチスの愛したフェルメール』だ。1945年、オランダの画家メーヘレンが、ナチス国家元帥ゲーリングにフェルメールの絵画を売った罪で逮捕される。ナチス協力者及びオランダ文化財略奪者として長期の懲役刑を求刑された彼は「全て自分が描いた贋作だ」と驚きの事実を告白する。時は遡り1920年代、若き画家メーヘレンは自身の作品をレンブラントやフェルメールら古典派の画風の継承だと批判されてしまう。自分が描いた贋作を“本物”として流通させて批評家たちを見返してやろうと考えたメーヘレンは、独自の工夫を凝らして研究家をも認めさせる贋作を生み出していく。