友の会からクラファンまで。苦境の美術館・博物館を支援する方法
「with コロナ」の時代において、大型展の予約制(定員抑制)を取り入れてる美術館・博物館は入場料収入も落ち込んでいる。こうした状況のなか、ミュージアムを支援できる方法をまとめた(本稿は2021年5月22日掲載記事の再編集版です)。
「with コロナ」の時代において、各美術館・博物館はコロナ前と比較し、展覧会の入場者数(入場料収入)は大きく落ち込んでいる。また原油高や輸送コストの増大などからの影響も避けて通れない。ミュージアムがこうした状況にあるなか、様々な支援する方法をまとめてみた。思い入れのある美術館や、地元の美術館など、ぜひ支援してみてほしい。
美術館「友の会」に入会する
美術館の活動をサポートし、展覧会の割引などの様々な優待を受けられる「友の会(メンバーシップ制度)」。ただ支援するだけでなく、特典についても注目したい。
東京国立博物館は、令和3年4月1日から新会員制度をスタート。年会費7000円で特別展無料観覧券やカフェ・ショップの割引特典もある1年間有効の「友の会」と、国立博物館4館の総合文化展(平常展)を何度でも観覧できる年会費2500円の「国立博物館メンバーズパス」の2種類の会員制度が用意されている。
このほか、会費が文化財の購入や修理などの博物館事業に充てられる賛助会員(5万〜100万円)もあるので、興味がある方はチェックしてはいかがだろうか。
私設美術館である森美術館は、現代アートの輪を広げることを目指して、アートファン同士の交流やアーティストの活動支援を目的に、メンバーシップ・プログラム「MAMC(マムシー)」を準備している。展覧会の一般会期に先立って行われる内覧会・レセプションに、同伴者とともに招待されるほか、アーティストと交流できるイベントも用意。作品誕生の背景や制作過程を深く知ることで、現代美術の本質に迫ることが可能だ。年会費は5500円から44000円となっている。
民藝運動の第一人者として知られる柳宗悦により企画され、1936年に設立された日本民藝館。手仕事の美しさを取り入れた豊かな生活を実践することを目的としている。 同館の「友の会」に入会すると、会員証の提示で同館のみならず、大阪日本民芸館および鈴木大拙館の入館料が無料に、豊田市民芸館が割引になるほか、民藝品や工芸品をあつかっているミュージアムショップが割引きになるなど、民藝に興味のあればぜひ利用したい制度だ。また、世田谷美術館にも割引料金で入館することができるのも、世田谷近辺に足を運ぶことが多い人には嬉しい特典だ。
以上のように、各美術館が用意する「友の会」の特典内容だが、多くの美術館でも年間を通して入場料が無料になる制度が用意されている。まずは親しみのある館の「友の会」に入会してみてはいかがだろうか。
図録やミュージアムグッズを購入する
図録やグッズの売り上げも美術館にとっては貴重な収入源だ。この機会に各館のミュージアムグッズにも目を向けてはいかがだろうか。
ウェブ版「美術手帖」では、オンラインで楽しめる全国のミュージアムショップをまとめた記事も掲載している。サルバドール・ダリのコレクションで知られる諸橋近代美術館や、郷土出身の画家・竹久夢二の作品を収集してきた夢二郷土美術館、西洋美術史を代表する名画1000余点を陶板で原寸大に再現・展示する大塚国際美術館など、コロナ禍の移動自粛で訪れることが難しい個性的な地方美術館も、オンラインショップなら支援することができる。
ほかにも、東京都美術館のミュージアムショップ「hmm,(ふむふむ)」は、オンラインショップも充実している。なかでも、18人のクリエイターが、自身の気に入った絵画をモチーフに描き下ろした作品をプリントしたTシャツはここでしか買えないものだ。
本来であれば、美術館を訪れて購入したい図録やミュージアムグッズだが、遠方からは難しいことも多い。オンラインショップを有効に活用することで、図録やグッズを楽しみながら支援してみてほしい。
オンライン寄付サイトを利用する
美術館によるクラウドファンディングも、美術館の支援としては注目を集めた。これまでに山種美術館、大原美術館、ワタリウム美術館などが実施し、多額の支援を集めた。現在、美術館や博物館の大きなクラウドファンディングはないものの、今後新たに実施する館があれば積極的に紹介したい。
独立行政法人国立美術館では、オンライン寄付サイトを立ち上げている。寄付を募集している事業は全部で7つ。「展覧会・上映会」「調査・研究」「所蔵作品・フィルムの修復」「教育普及」「建物・設備の整備」「情報・資料の収集」「国立美術館全体への寄附」に分かれており、一口1000円から支援することが可能だ。寄附には特典もあり、10口以上でノート、20口以上でポーチ、50口以上でモバイルバッテリーが贈答される。
東京国立博物館などを所管する国立文化財機構も寄附ポータルサイトを立ち上げている。国立文化財機構は税法上の優遇措置の対象となる「特定公益増進法人」であり、寄附を行った個人や団体は所得税・法人税の優遇措置を受けることができる。サイトでは各国立博物館の寄附事業・会員制度を横断的に把握できるようになっているので、一度チェックしてみてはいかがだろうか。
SNSによる情報発信で支援
直接の金銭的な支援でなくとも、個人のTwitterやInstagramで応援したい美術館の展覧会の感想や思いをつぶやくだけでも、美術館の魅力を広く周知する手伝いができるかもしれない。