展覧会の再体験不可能性──あるいは私の再現不可能性と展覧会鑑賞のススメ
展覧会は会期が終われば二度と再体験することはできない──この当然のように思える事実について、キュレーター・小金沢智が短いテキストを寄せてくれた。
ウェブ版「美術手帖」編集長の橋爪勇介さんから、「展覧会の再体験不可能性」について書いて欲しい、という依頼があり、それは、私がX(旧Twitter)にポストした以下の投稿を見たからなのだが、この投稿が、なぜか、普段の投稿に比べてずいぶんたくさんの人に見られている(見られた)。
美術の勉強が厄介なのは、展覧会の鑑賞体験に左右されがちということ。この本は重要だから読みましょう、とは学生に勧められるけれど(絶版でも持っていれば貸せる)、2010年のあの展覧会は重要だから見てきてください、とは言えない。図録があればいいというものでもない(でもあったほうがいい)。
— 小金沢智 (@koganezawas) May 5, 2024
この一連の投稿から、「展覧会の再体験不可能性」というワードにいたり、原稿依頼までする橋爪さんがまず面白いが、これは、その前段階として、美術作家の藤野裕美子さんがポストしていた以下の内容を受けてのものである。
右は2007年、私が大学一年生の時に京都国立近代美術館で開催された福田平八郎展。左は2024年、中之島美術館。前者、美術の教科書で見ていた《雨》実物に感動したことと、当時はよく知らなかった初期作品の精緻さに驚いたことを覚えている。図録買うお金なかったろうに、よく買っておいてくれた19の私。 pic.twitter.com/3TMDk0QsbY
— FUJINO yumiko (@Y_iko) May 5, 2024