2024.5.30

見て、参加して、味わう。アート県・青森の楽しみ方

県内に5つの美術館・アートセンターを擁する青森県。現在開催中の「AOMORI GOKAN アートフェス 2024」を機に、その楽しみ方を、「建築」「歴史・文化」「アート」の3つの切り口から紹介する。

文=坂本裕子

弘前れんが倉庫美術館
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建築を楽しむ

 青森県立美術館は青木淳の設計。隣接する縄文時代の遺跡に着想し、土の溝の上に白い外壁の構造体が被さる不思議な空間も楽しめる。青森公立大学 国際芸術センター青森(以下、ACAC)の設計は安藤忠雄。山の起伏を活かしつつ、周囲の自然景観を壊さぬよう「見えない建築」をコンセプトにした建築群で、屋外ステージを備えた馬蹄形の展示棟は、漣を思わせる水面を囲み、風景や風を映して美しい。

青森県立美術館
青森公立大学 国際芸術センター青森
青森公立大学 国際芸術センター青森

 弘前れんが倉庫美術館は、約100年前に酒造工場として建てられ、戦後はシードル工場として使われていた煉瓦造りの倉庫を田根剛が改修設計した。「記憶の継承」をコンセプトにした改修は、内外ともに可能な限り建物の状態を残し、独自の展示空間となって、アーティストたちの感性を刺激する。

弘前れんが倉庫美術館

 十和田市現代美術館は、SANAAで知られる西沢立衛の設計。それぞれの展示室が独立した建物になっており、それをガラス張りの通路がつないでいる。訪れた人は、一つ一つの作品の家を訪ねるように、じっくりと作品に向かい合える。また、藤本壮介の設計による2022年に開館した「十和田市地域交流センター とわふる」は、鈴木ヒラクの軽やかな壁画とともに、新たなアートスポットだ。散歩ついでにチェックしたい。

十和田市現代美術館外観。手前はチェ・ジョンファ《フラワー・ホース》
十和田市地域交流センター とわふるの外観は鈴木ヒラク 《光と遊ぶ石たち》

 八戸市美術館は、西澤徹夫、浅子佳英、森純平の設計。市民が気軽に自由に集える美術館を目指した同館は、公募型プロポーザルにより市民の声も取り込んで、「ジャイアントルーム」と呼ばれる巨大空間を中心に、展示や撮影、上映が可能な小部屋が周囲に配されている。

八戸市美術館外観

 また、弘前市には、関東以北では唯一天守閣が現存する弘前城はもとより、藩政時代から明治大正期の洋風建築が多く残り、現在も多くが使用されている。さらに、日本のモダニズム建築を代表する前川國男の建築が初期から晩年まで、8件まとまって見られるのも建築ファンにはたまらないだろう。喫茶室になっているところもあるので、一休みしながら1日建築ツアーにあてるのもいいかもしれない。

旧弘前市立図書館 1906年設立。弘前市の明治建築を代表する洋風建築のひとつ。内部は無料で見学可能
弘前市民会館(前川國男設計)外観
弘前市民会館(前川國男設計)内観 ステンドグラスは弘前出身の画家・佐野ぬいが原作を制作

 弘前から鉄道で30分ほどの黒石市には、「日本の道百選」にも選ばれた中町通りがある。江戸時代中期の建築で国指定重要文化財の「高橋家住宅」や、造り酒屋、蔵などが、「こみせ」と呼ばれる伝統的なひさしのある歩道で連なる一角は、まさにタイムスリップしたような気持ちになる。

 夏休みを利用するなら、黒石市の途中、田舎館村では、いま話題の「田んぼアート」も楽しめるだろう。

黒石市中町地区の国指定重要文化財「高橋家住宅」
黒石市中町「こみせ通り」の風景 奥の松の木が見えるのは、大正期から平成5年まで営業していた湯屋

 歴史・文化を感じる