美術家・久門剛史が
ガラスを用いた新作を発表。
「気配」や「不在」を示す
新しい試みに注目
美術家・久門剛史の個展「トンネル」が、東京・六本木のオオタファインアーツで開催される。本展では、透明なガラスを用いた新作の立体作品および平面作品が発表される。会期は7月20日〜9月1日。
久門剛史は1981年京都生まれの美術家。2007年、京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。13年の 「shiseido art egg 久門剛史」展(資生堂ギャラリー、東京)のほか、オオタファインアーツでは過去2度の個展を行った。
また、「Exchange -種を植える-」(国際芸術センター青森、青森、2013)をはじめとする数々のグループ展や、「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」(六甲山、兵庫、2015)、 「あいちトリエンナーレ 2016」(愛知県各地、2016)といった芸術祭にも参加するなど、精力的に活動している。主な受賞歴に、日産アートアワード オーディエンス賞(2015)、VOCA賞(2016)がある。
過去にアーティストグループ「 SHINCHIKA(シンチカ)」のメンバーとして音響を手がけていた久門は、その経験を生かし「音」「彫刻」の2つの要素を主軸として作品を展開。日常に散在する光、立体を素材に、鑑賞者の個人の記憶にアクセスすることで、パラレルな異空間に誘うインスタレーションをつくりだす。
東京・六本木のオオタファインアーツにおいて、4年ぶりの個展開催となる今回の「トンネル」展は、近年の作品が持つ要素を保ちながらも、その世界観をさらに深めた新作の立体および平面作品が発表される。
新作の立体作品において、これまで多用されてきた鏡は使わず、透明なガラスを用いている。ガラスケースの一部を丸くくり抜き、それを傾け回転させることで生じる微細なズレは、透明ゆえに境界が曖昧であり、「気配」のような実体として現れる。いっぽうで、壁に投射されるスポットライトの丸い光は、その実体を持たないながらも強い存在感を放つ。
これまでモノ同士の関係性が作品の重要な要素となっていた久門にとって、モノの「気配」や「不在」をとらえる証明のような行為は、今後の制作活動において大きな展開を予想させる新たな試みとなるだろう。