文豪・泉鏡花×球体関節人形。東京・弥生美術館で、鏡花が書いた女性が100年以上の時を経て蘇る
『高野聖』など、幻想文学の代表的な作家として知られる泉鏡花。その作品に登場する女性を球体関節人形として表現した作品を展示する「文豪・泉鏡花×球体関節人形 ~迷宮、神隠し、魔界の女~」展が、東京・弥生美術館にて開催中。会期は2018年9月24日まで。
泉鏡花(1873~1939)は、明治後期から昭和初期かけて300編あまりの作品を生み出した作家。幻想文学の先駆けとして知られ、代表作に幽玄世界を表現した『高野聖』などが挙げられる。また、明治の世俗を批判的に書いた『夜行巡査』『外科室』などの観念小説で一躍脚光を浴び、その後『照葉狂言』では幻想的でロマンチシズムな独自の世界を築いた。
その鏡花文学に登場する女性を、腕、足、腹などの関節に球を入れてつくられ「生き人形」とも呼ばれる球体関節人形として見せる展覧会が開催されている。手がけたのは、球体関節人形作家として知られる吉田良と、その指導を受けたドールハウス・ピグマリオンの作家たち。吉田は1973年より人形制作を始め、83年には自由が丘にスペース・ピグマリオンを設立。「球体関節人形展~DOLLS OF INNOCENCE~」(東京都現代美術館)への出品後、映画や書籍に作品が起用され、作品写真集や技法書を出版。写真家としても活動しており、人形写真集を多く手がけている。
本展は、鏡花文学と球体関節人形のコラボレーションに加え、明治~大正期に鏡花作品を飾った木版、石版口絵、肉筆の手紙なども展示。様々な角度から鏡花の生涯とその作品世界を紹介する。