「199X」年に文明が滅んだとして。MoMA所蔵の美術家・佃弘樹が「事後の世界観」を表現した新作を発表
美術家・佃弘樹の個展「199X」が、東京・渋谷のNANZUKAで開催されている。本展は、佃自身が青春期に影響を受けた映画、漫画、小説を通して触れた世紀末思想をもとに展開される。会期は9月29日まで。
佃弘樹は1978年香川県生まれの美術家。2001年の武蔵野美術大学映像学科を卒業後、東京を拠点としながら、ドイツのケルンやアーヘン、ニューヨークなどでも個展を開催するなど、国内外問わず精力的に活動を行っている。17年に発表した大作はニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵され、注目を集めた。
現在、東京・渋谷のNANZUKAで開催中の個展「199X」は、佃自身が青春期に影響を受けたという映画、マンガ、小説を通して触れた世紀末思想をもとに展開されるもの。幼い頃より、映画『2001年宇宙の旅』『マッドマックス』『ブレードランナー』、マンガ『北斗の拳』などに描かれる「事後の世界観」に影響を受けた佃は、「199X」年に文明が滅んだとして独自のストーリーを展開。
その後の新世界を表現することで、核戦争の危機が現実的だった時代の不安や絶望、そこに反作用的に湧き上がった様々なエネルギー、世紀末の高揚感や新世界への期待といった当時の記憶と、現代におけるAIの進化、SNSやVRの発展による仮想空間への依存が起こる現代社会を、対比的に俯瞰しようと試みている。
本展では、日常品やファウンド・オブジェクトを用いたインスタレーションとインクペインティングのほか、写真や即興で描き上げたドローイング、それらを記号的な幾何学模様を印刷したアクリルフレームと組み合わせた作品も公開。現代社会が抱える閉塞感に対する、佃のまなざしをたどりたい。