壮大なボルタンスキーの芸術世界。日本初の大回顧展「Lifetime」が国立国際美術館を皮切りにスタート
フランスを代表するアーティストのひとり、クリスチャン・ボルタンスキー。その初期作品から最新作までを紹介する国内初の大回顧展「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」が、大阪の国立国際美術館での開催を皮切りに、国立新美術館、長崎県美術館に巡回する。半世紀を超える作家活動を経て、今日もなお壮大な芸術世界を展開し続けるボルタンスキーの実践をたどる。会期は2019年2月9日〜5月6日。
フランス現代美術を牽引するクリスチャン・ボルタンスキー。1968年に短編映画と彫刻作品による初個展をパリのラヌラグ劇場で開催して以来、世界各国で作品を発表してきた。
おもに短編映画の制作を経て、70年代からは写真表現に着目してきたボルタンスキー。人々が歩んできた歴史や文化人類学への関心を土台とし、写真やドキュメント、そしてビスケット缶などの日用品を組み合わせることによって、自己あるいは他者の記憶に関連する作品を手がけるようになった。
そして80年代に入ると、明かりを用いたインスタレーションの制作をスタート。子供の肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせた「モニュメント」シリーズを通じて、人々に宗教的な問題への意識を促した。それをさらに発展させた《シャス高校の祭壇》(1987)は、31年にウィーンの高校に在籍していたユダヤ人の学生たちの顔写真を祭壇状に並べ、その写真を電球で照らすというものだ。
肖像写真を集めて展示する大胆な手法は、ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺とその犠牲者のイメージを想起させるものとして人々に解釈され、また、ユダヤ系の父を持つボルタンスキー自身の問題とも結びつき、大きな議論を巻き起こした。
その後もパリのグラン・パレの広大なスペースを生かし、大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010)など、様々な手法によって「歴史」「記憶」「死」「不在」をテーマとした作品を発表してきたボルタンスキー。日本ではジャン・カルマンとの共作《夏の旅》(新潟・越後妻有、2003)や、《ささやきの森》(香川・豊島、2016)といった恒久設置作品を制作。2016年には東京での初個展「アニミタス-さざめく亡霊たち」(東京都庭園美術館)を開催し、大きな話題を集めた。
そして今回、大阪の国立国際美術館での開催を皮切りに、国立新美術館、長崎県美術館に巡回予定の「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展は、ボルタンスキーの初期作品から最新作までを紹介する国内初の大回顧展。70年代から近年までのボルタンスキー作品を振り返るとともに、ボルタンスキー自身が会場に合わせたインスタレーションを手がけるという構想のもと企画されたという。
本展では、「モニュメント」シリーズをはじめ、初期の映像作品《咳をする男》(1969)や、《保存室(カナダ)》(1988)なども展示。半世紀を超える作家活動を経て、今日もなお壮大な芸術世界を展開し続けるボルタンスキーの実践をたどりたい。