ダミアン・ハーストの新境地は「桜」。パリ・カルティエ現代美術財団で「Cherry Blossoms」シリーズを披露
パリにあるカルティエ現代美術財団で、ダミアン・ハーストによる個展「Cherry Blossoms」が開催。桜を描いた新シリーズを、パリで初披露する。会期は2020年6月〜11月。
1980年代末にロンドンのゴールドスミス・カレッジ・オブ・アートで学び、後に「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」と総称されるアーティストたちの代表的な存在となったダミアン・ハースト。その個展がこの夏、パリのカルティエ現代美術財団で開催される。
ダミアン・ハーストは1965年イギリス・ブリストル生まれ。サメを巨大な水槽でホルマリン漬けにした作品《生者の心における死の物理的不可能性》(1991)をはじめ、多彩な作品で死のなかに生を感じさせる表現を行ってきた。
2017年には、ヴェネチアで大規模個展「Treasures from the Wreck of the Unbelievable」を開催。東アフリカの海底に沈んだ架空の難破船「アンビリーバブル号」から発掘した宝物を展示する、という壮大なコンセプトのもと、圧倒的な巨大作品群で大きな話題を集めた。
そして今回、個展で発表される「Cherry Blossoms」は、ハーストが「自然に湧き起こる絵画の楽しさを見直したもの」だという。
印象主義と点描画法とアクションペインティングを参考に、 濃厚な筆致で描かれた作品群。無数のカラフルな点からなる「スポット・ペインティング」シリーズを彷彿とさせながら、そこにはハースト自身の手描きの痕跡が色濃く残る点がまったく異なる。ハーストはこう語る。
「『Cherry Blossoms』は、美と生と死にまつわるものです。極端な作品であり、そのテーマについてどこか野暮ったい部分があります。ジャクソン・ポロックのように、愛のひねりが加えられ、装飾的でありながら自然から題材を得ており、願望や周りの物事をどのように処理し、それを何に変えるのかをテーマにしています。そして美の常軌を逸した視覚的なはかなさを描いた、晴れた空を背景に狂ったように咲き誇る一本の木なのです。アトリエで色と絵の具に没頭しきって作品を制作するのはとても楽しいです。作品は、けばけばしく、ごちゃごちゃしていて、はかなく、私のミニマリズム離れや、想像上の機械仕掛けの画家というアイデア離れを物語るものであり、私にとって、とてもわくわくするものです」。
ハーストの新たなステップとなるこのシリーズに注目だ。