最果タヒの“詩の展示”、渋谷・名古屋・心斎橋のPARCOで開催へ。新作を公開
株式会社パルコは、現代詩人・最果タヒの“詩の展示”を渋谷・名古屋・心斎橋の各パルコにて巡回開催することを発表した。
2006年に現代詩手帖賞を、2008年に中原中也賞を、そして2015年に現代詩花椿賞を受賞するなど、いまもっとも注目すべき現代詩人・最果タヒ。その個展「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」が、渋谷(2020年12月4日~12月20日)・名古屋(2021年2月13日~2月28日)・心斎橋(2021年3月5日〜3月21日)の各パルコにて巡回開催されることが明らかになった。
最果タヒは1986年生まれ。数々の詩を発表するいっぽうで、近年は展覧会にも積極的に取り組んでおり、グループ展としては太田市美術館・図書館の「ことばをながめる、ことばとあるく――詩と歌のある風景」(2018)に参加。また昨年は横浜美術館において、個展「氷になる直前の、氷点下の水は、蝶になる直前の、さなぎの中は、詩になる直前の、横浜美術館は。― ― 最果タヒ 詩の展示」を開催し、3万人以上が来場するなど話題を集めた。
本展は、この横浜美術館の個展でのインスタレーションを含む、新作の“詩の展示”を公開。デザインは、これまで最果タヒの書籍の装幀をはじめ、様々な企画でタッグを組んできた佐々木俊が担当する。
最果タヒが本展開催に寄せたメッセージ 言葉は、常に運動をしている。何億人もの人がその言葉を用い、それでいて、それぞれが少しずつ違った意味や印象を、言葉の向こうに見出している。だからこそ言葉は、刻々と変化し、運動を続けている。わたし一人が、言葉を一方的に、道具として用いることなどできず、常に、言葉が抱える無数の意味や価値の渦に巻き込まれていく。そのコントロールのできなさ、言葉に振り回される瞬間に、わたしは「言葉に書かされている」と感じます。それは時に、わたしよりも深く「わたし」を捉える言葉となる、わたしを飛び越えた、別の何かへと変貌する言葉となる、それこそが、わたしにとっての「書く喜び」です。言葉がわたしの代弁者として、世界へ出ることなどありません。わたしはいつも置き去りにされ、それこそが痛快であるのです。知らない自分に、言葉で会うこと。それは、自分の底さえ突き破り、その向こうの、自分ですらないものへと、繋がることだ。だからこそ言葉は、書かれ、他の誰かに読まれることをじっとじっと待っている。 詩の展示。 言葉が、わたしを飛び越える。それは、「読む」瞬間もきっと同じです。読むことは、与えられた言葉を受動的に読むのではなく、その言葉を自分だけの言葉へと変容させていく行為だと思う。そのとき、言葉の変化は、読むその人の予想を、そしてその人自身を、時に追い越していくだろう。それは「書かれた言葉」のスピードであると、読み手は思うのかもしれない。けれど、あなたも加速して いる、あなたの言葉が、加速している。そのスピードを、肌で、気配で、空間として、感じられる場所を、私は「詩の展示」 と呼んでいます。 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。あなたしか立つことのできない確かな星から、どうか、言葉を見に来てください。