スターリング・ルビーの個展が東京と京都の3会場で同時開催。民間呪術や日本の怪談に着想を得たインスタレーションも
アメリカ出身で、国際的に評価されている現代アーティスト、スターリング・ルビー。その新作個展がタカ・イシイギャラリー京都、タカ・イシイギャラリー(TERRADA ART COMPLEX II)、東京の草月会館1階にある石庭「天国」の3会場で同時に開催される。
アメリカ人アーティスト、スターリング・ルビーによる個展が、タカ・イシイギャラリー京都、タカ・イシイギャラリー(TERRADA ART COMPLEX II)、東京の草月会館1階にある石庭「天国」の3会場で同時開催。すべて新作で構成されている。
ルビーは1972年生まれ。光沢のあるポリウレタンやブロンズ、鋼鉄を用いた立体作品から、ドローイングやコラージュ、ふんだんに釉掛けした陶器、油彩画、写真、映像、さらにはキルト、タペストリー、衣服、ソフトスカルプチャーといった布作品まで、多様な素材や技法を駆使して作品を制作している。
その作品では、つねに様々な要素が緊張関係を保ち、危うい均衡を成り立たせており、社会のなかの暴力や圧力、美術史に関わる問題、そして自身の過去などが扱われている。すべての作品においては、流動と静止、ミニマリズムと表現主義、純粋さと汚れの間で揺れ動く作家像を見ることができる。
2019年、ルビーは アメリカの「Desert X」というプロジェクトに参加。京都での個展「SPECTERS KYOTO」(11月25日〜2024年1月20日)は、そこで取り組んだテーマをさらに拡大し、民間呪術と超自然世界に踏み込むかたちで構成したものだという。
伝統的な町家である京都会場では、土壁の美しさや建築上の特徴を活かし、その空間に「取り憑いた」作品が展示。日本と欧米の怖い話に深く関わり、象徴的な意味をもつ有機的な素材──例えば髪の毛や木、さらには動物の骨や乾いたひょうたんなどが用いられており、日本に帰化したギリシャ人作家ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の怪談話に触発されて生まれたコラージュ的な立体作品などを見ることができる。
草月会館での「SPECTERS TOKYO」展(11月23日〜12月23日)では、同じく日本の怪談に着想を得たサイト・スペシフィックなインスタレーションが発表。作家にとって日本で初めてのパブリック・アートとなる本展は、イサム・ノグチの石庭「天国」を再考し、生者と死者との交流について探求したものだという。会場には使い古された布やファウンド・オブジェで構成されたインスタレーションが展開されている。
また、TERRADA ART COMPLEX IIでの「Heat. Minthe. Swells.」展(11月23日〜12月23日)では、「TURBINE(タービン)」シリーズの新作絵画が展示。ルビーの代表的な「WIDW」(「窓=WINDOW」の略)シリーズを拡大させたこのシリーズは、ペインティングとコラージュの境界を問い直そうとするものであり、力強くあざやかなキャンバスを斜めに切り裂く様は、 タービンや風車のみならずハリケーン、戦争、爆発や火──すなわち「熱」の放出体をも想起させる。ルビーの作品を3会場で楽しめる機会をお見逃しなく。