2024.11.8

「ひろしま国際建築祭2025」が初開催へ。建築切り口に瀬戸内エリアでさらなる集客目指す

「建築」を切り口にした3年に一度の新たなフェスティバル「ひろしま国際建築祭」が2025年に初開催を迎える。その狙いとは?

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

尾道市立美術館
写真提供=尾道市立美術館
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 「建築」を切り口にした3年に一度の新たなフェスティバル「ひろしま国際建築祭」が2025年に初開催を迎える。会期は2025年10月4日〜11月30日の58日間。

 ひろしま国際建築祭は、「建築で未来の街をつくり、こどもの感性を磨き、地域を活性化させ、地域の名建築を未来に残すこと」をミッションに掲げるもの。主催は建築文化を発信することを目的のひとつとして設立された福山市の「神原・ツネイシ文化財団」(代表理事:神原勝成)だ。理事には石川康晴(石川文化芸術振興財団理事長)や大原あかね(大原芸術財団代表理事)、福武英明(福武財団代表理事)らが名を連ねる。

 総合ディレクターは、『Casa Brutus』元副編集であり現在は慶應義塾大学SFC特別招聘教授を務める白井良邦。チーフ・キュレーターは、森美術館時代に「メタボリズムの未来都市展」「建築の日本展」などに携わり、「京都モダン建築祭」を立ち上げた京都市京セラ美術館企画推進ディレクターの前田尚武。

 10年の構想を経て、開催が発表されたこの建築祭。白井は「街を使い、同時多発的に建築の展示を行うことで、瀬戸内から建築文化を発信していく」と意気込みを見せており、瀬戸内国際芸術祭や岡山芸術交流と同時期に開催することで、瀬戸内エリアでのさらなる集客を狙う。

 会場となるのは同財団が本拠地を置く福山市と尾道市。ふくやま美術館市民ギャラリーや尾道市美術館、スタジオムンバイが手がけたLOGなど10以上の会場が舞台となり、各エリアは徒歩で回遊できるスケールが設定された。

ふくやま美術館
©福山観光コンベンション協会
LOG
写真提供=せとうちクルーズ
ONOMICHI U2
写真提供=せとうちクルーズ
iti SETOUCHI
撮影=足袋井竜也

 総合テーマは「つなぐ──「建築」で感じる、わたしたちの“新しい未来”」。メイン展示となるのは、尾道市立美術館(設計:安藤忠雄)での建築展だ。「ナイン・ヴィジョンズ:日本から世界へ跳躍する9人の建築家」と題されたこの展覧会は、建築界のノーベル賞と称される「プリツカー賞」を受賞した日本人建築家8組(9名)にフォーカスするもの。丹下健三(1987年受賞)、槇文彦(1993年受賞)、安藤忠雄(1995年受賞)、妹島和世・西沢立衛(2010年受賞)、伊東豊雄(2013年受賞)、坂茂(2014年受賞)、磯崎新(2019年受賞)、山本理顕(2024年受賞)らの仕事を通じ、なぜ日本の建築家は世界で評価され、どのようにして世界レベルに達したのかを提示するという。これまでありそうでなかった展覧会だ。

台中国家歌劇院
©︎伊東豊雄建築設計事務所

 また神勝寺 禅と庭のミュージアム(無明院)では、神原・ツネイシ文化財団が取り組む、建築家・丹下健三が東京・成城に設計した自邸(1953年竣工。現存せず)を広島県・福山市の海辺に再建するプロジェクトに関する展示も行われる。

神勝寺 禅と庭のミュージアム(無明院)
写真提供=神原・ツネイシ文化財団
住居(丹下健三自邸) 「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」(森美術館、2018)展示風景より
撮影=来田猛 写真提供=森美術館

 そのほか、テーマに沿った独自の展示や、おりづるタワー(広島市)やA&Aプロジェクト(岡山市)などサテライト会場での展示、普段は見ることができない文化財指定を含む様々な建築の一般公開、シンポジウム、トークイベント、ラーニングプログラムなどが予定されている。

 2025年、西日本エリアは大阪関西万博をはじめ、「Study:大阪関西国際芸術祭2025」(4月〜10月)、「瀬戸内国際芸術祭2025」(4月18日~11月9日)、国際芸術祭「あいち2025」(9月13日~11月30日)、「岡山芸術交流2025」(9月26日~11月24日)など大型イベントが目白押しとなる。このなかでひろしま国際建築祭がいかに存在感を示すことができるだろうか。