第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展、日本館出品作家はダムタイプに。史上初、選考委員会が作家を直接選定
国際交流基金は、2021年に予定されている第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館出品作家を発表。ダムタイプが選ばれた(ビエンナーレは新型コロナの影響で22年に延期)。
2020年5月19日追記:ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展は新型コロナウイルスの影響で2022年に延期となった
国際交流基金は、2021年5月から11月にかけてイタリア・ヴェネチアで開催される「第59回ヴェネチア・ビエンナ ーレ国際美術展」の日本館代表作家をダムタイプに決定した。
ダムタイプは1984年に結成。当時、京都市立芸術大学の学生だった古橋悌二や高谷史郎を中心に活動を開始したグループで、ヴィジュアル・アート、映像、コンピューター・プログラム、音楽、ダンス等、様々な分野の複数のアーティストによって構成されている。特定のディレクターを置かず、プロジェクト毎に参加メンバーが変化し、そのヒエラルキーのないフラットでゆるやかなコラボレーションによる制作活動は、美術、演劇、ダンスといった既成のジャンルにとらわれない、あらゆる表現の形態を横断す るマルチメディア・アートとして内外で高く評価されている。
これまでに、メルボルン国際芸術フェスティバルやバービカン・センター(ロンドン)、新国立劇場(東京)、国際モダンダンス・フェスティバル(ソウル)、リヨン現代美術館、アテネ・コンサートホール、シンガポール芸術祭、シカゴ現代美術館、アムステルダム市立劇場などで作品を上演/展示。 近年は、個展「DUMB TYPE | ACTIONS + REFLECTIONS」を、ポンピドゥー・センター・メッス(フランス、18年1月20日~5月14日)と、東京都現代美術館(19年11月16日~20年2月16日)で開催したことも記憶に新しい。
ヴェネチア・ビエンナーレの日本館は、これまで選考委員会が指名したコミッショナーが作家を選定する、あるいは指名コンペによってコミッショナー/キュレーターの企画プランを選定する方法を採ってきた。しかしながら、今回は選考委員会(*)が直接に作家を選定する方法を採用。これは史上初のことだ。国際交流基金はこれまでの指名コンペ方式が「着々と成果を上げてきた」としながら、この直接選定については次のようにコメントしている。「コンペは指名された4、5名のキュレーターから寄せられるプランのなかから作家を選ぶということで、ある意味で受動的な部分もある。今回はそうではなく、もっと能動的に、どの作家を紹介すべきかを専門家に深く議論いただき、選考する方式をとることにした」。
選考委員のひとりである建畠晢はダムタイプについて、「選定理由としては十分な活動歴があり、海外でも高い評価を受けていると同時に、現在もきわめて先鋭な作品を発表し続けていること、日本館での強力なプレザンスのある展示が期待できることなどが挙げられた」としており、「最近注目されている『アートコレクテイヴ』の先駆け的な存在であり、メンバーを更新しながら、変化する情報とメデイア環境の中の人間性を探求し続けている」と評している(コメント部分は原文ママ)。
ダムタイプのステートメントは以下の通り。
ダムタイプは システムである 活動開始以来、特定のディレクターを置かず、様々なメンバーが参加し、フラットな関係での共同制作を行い、その活動の領域を拡張してきた。 ダムタイプは、さらに拡張する ダムタイプは、観察する 自然を テクノロジーを 社会を 人間を post-truthの時代を 「真実の向こう側」を 「時代の穴」を post-truth 「Truth」自体を疑うこと 今まで信じてきたシステムが崩壊しようとしている分断された混沌しかない世界で、今まで事実だ と思われていたものが不確かに感じられ、人々は自分たちが信じたいものを「真実」と思い込む。 「真実」は、もはやかつての「真実」ではない 「未来」は、もはやかつての「未来」ではない 「希望」は、もはやかつての「希望」ではない 「幸せ」は、もはやかつての「幸せ」ではない インターネット上の言説空間=post-truthをどう受け止め、霧のように重さの無くなった言葉に包 囲されている情報環境の中で「当たり前」を純粋な視線で見つめ直し、「今をどう理解し、生き、 そして死んでいくのか?」 問い続けなければならない。
*──今回の選考委員は、建畠晢(埼玉県立近代美術館館長・多摩美術大学学長)、中井康之(国立国際美術館副館長) 、長谷川祐子(東京都現代美術館参事・東京藝術大学大学院教授)、松本透(長野県信濃美術館館長)、南雄介(愛知県美術館館長)、鷲田めるろ(キュレーター)が務めた。