メット・ブロイヤーが閉館へ。建物は「フリック・コレクション」に譲渡
3月13日より臨時休館しているメトロポリタン美術館の分館「メット・ブロイヤー」が、再開せずに閉館することを発表した。ハンガリー出身の建築家マルセル・ブロイヤーによって設計された同館の建物は、アメリカの美術館「フリック・コレクション」に譲渡される。
3月4日にゲルハルト・リヒターの回顧展「Gerhard Richter:Painting After All」を開幕し、新型コロナウイルス感染拡大によりわずか9日後の13日に臨時休館したメトロポリタン美術館の分館、メット・ブロイヤー。ニューヨーク市が経済活動の制限を緩和したにもかかわらず、メトロポリタン美術館は、この分館が再開せずに閉館することを発表した。
メット・ブロイヤーの建物は、ハンガリー出身の建築家マルセル・ブロイヤーによって設計されたもの。1966年に完成し、当初はホイットニー美術館として開館。2015年、ホイットニー美術館は現在ハイライン公園の南端の場所に移転。その後、メトロポリタン美術館はこの建物を8年間リースし、16年に分館としてメット・ブロイヤーを開館した。
当初、メトロポリタン美術館は23年までメット・ブロイヤーを使って近代・現代美術の展覧会を行う予定だった。しかし18年には、同館は予算削減のため、ニューヨークの美術館「フリック・コレクション」にその建物を20年に譲渡する計画を発表。今回メット・ブロイヤーの閉館は、その譲渡計画の結果だ。
またメトロポリタン美術館は14年、5番街本館のモダン&コンテンポラリー・ギャラリーの改修計画を発表。しかし同館の財政赤字の増大により、この計画は大幅に延期された。
18年、同館の現館長であるマックス・ホラインが就任し、その改修計画を復活させるため、メット・ブロイヤーの譲渡が決定した。分館の閉館後、その改修計画および近代・現代美術展のプログラムについては、まだ明らかにされていない。
なお今年4月には、メトロポリタン美術館は1億5000万ドル(約160億6700万円)の財源不足や、81人の職員を一時帰休させることを発表。新型コロナウイルスの影響により世界中の美術館が休館を続け、財政赤字に苦戦しているなか、世界最大規模の美術館であるメトロポリタン美術館はいかにこの危機を乗り越えるのか、注視したい。