2021.5.17

アート界から入管法改正案に「NO」。滝朝子×オクイ・ララ、川上幸之介らがウェブサイトで作品を展示

政府与党が今年2月に国会に提出した出入国管理法などの改正案をめぐり、同法案に反対するアーティストたちに呼びかけ、滝朝子がウェブサイトを立ち上げた。

滝朝子が立ち上げたウェブサイトより

 5月14日に国会で採決が見送られた、外国人の収容や送還を見直す出入国管理法などの改正案をめぐり、同法案に反対するアーティストたちの関連作品を展示紹介するウェブサイトが公開された。

 17日の時点では、滝朝子×オクイ・ララ《Toツー通》、川上幸之介《ALARA》、長倉友紀子《BORDER》、近藤愛助《here where you stood》が同ウェブサイトに公開されており、今後は良知暁、multiple spirits、川久保ジョイ、鄭梨愛、本間メイ、飯山由貴の作品も追加予定となっている。

 今回の改正案に対して、これらのアーティストは次の声明文を発表している。また、賛同者も募っており、近日中に法務省に提出するという。

アートは不可避的に文化の融合を含みます。移民・難民の経験や、またその人たちと、その文化とのコミュニケーションが、多くのアート作品の源泉や主題となっています。

そしてアーティストと作品は国際的な移動を繰り返しながら、制作や発表をしています。
私たちはそういった文化や移動の蓄積から学び、移民・難民・ミックスルーツの人々と関わり、また当事者として制作し、生活しています。

植民地時代あるいはそれ以前からいままで、日本政府は外国籍、無国籍、ミックスルーツの人々に対し排他的な制度と偏見を持ち続けています。生活を営む人として受け入れる制度を整えず、出入国管理及び難民認定法は人権を制限する制度であり続けています。与党提出の入管法改悪案は、いまここにいる人たちの移動の自由・就労の自由、そして最悪の場合、命を奪うもので、少しも妥協できるものではありません。制度として必要なのは在留資格や特別許可です。

また、私たちは制作において当事者の意思を無視し搾取しないよう、アーティストおよび制作体制とその手続きを省みます。当事者の意思を無視した作品、および作品公開に抗議します。人として関わり、その人たちの権利を奪わないかたちで、声をあげるべきだと考えます。

(企画人=滝朝子)

 今年2月、政府与党は不法に在留する外国人の送還忌避・長期収容問題の解決を図ることを目的に、出入国管理法などの改正案を国会に提出。現在の入管法では、難民認定手続中の外国人は、申請の回数や理由などを問わず日本から退去させることができない。しかし改正案では、これらの外国人に対し、難民認定の申請が2回までと制限が設けられており、3回目以降の申請の際には強制送還されるようになる。

 1回目の難民申請で適正な判断がされないため、難民として庇護を必要としている人は何度も難民申請を繰り返す必要がある。そのため、今回の改正案における申請回数の制限は大きく問題視されている。

 認定NPO法人「難民支援協会」によれば、2019年に日本が認定した難民数はわずか44人で、難民認定率は0.4パーセントだった。同年5万3973人、4万4614人を認定したドイツやアメリカなどの国と比べると、非常に低い水準となっている。

 この改正案について、同協会は声明文で次のように訴えている。「本来、難民と認められるべき人の多くが認定されていない日本の難民認定制度において、このような規定を設けることは、迫害を受けるおそれがある出身国に難民が送還される可能性を高めるものとして許されない」。

2021年5月18日追記:ステートメントが変更されたものを反映。