第44回「写真新世紀」グランプリは賀来庭辰に決定。30周年回顧展も東京都写真美術館などで開催へ
今年度をもって公募が終了する第44回「写真新世紀」のグランプリが賀来庭辰に決定した。同賞の30周年を記念した回顧展が来年秋に東京都写真美術館およびキヤノンギャラリーSで開催予定となっている。
今年度をもって公募が終了するキヤノン主催の文化支援プロジェクト「写真新世紀」。第44回となる今年度のグランプリに賀来庭辰(かく・なおたつ)が選出された。
今年の「写真新世紀」は、3月17日〜5月31日の期間で募集を行い、過去最多となる2191名(組)の応募が国内外からあった。7月に優秀賞選出審査会が行われ、優秀賞受賞者7名と佳作受賞者14名が選出。また11月12日にはグランプリ選出公開審査会が東京都写真美術館で行われ、優秀賞受賞者7名によるプレゼンテーションおよび審査員との質疑応答を経て、審査員の合議により賀来は2017年の佳作に続いてグランプリの受賞が決定した。
賀来には、奨励金100万円と副賞としてのキヤノンのミラーレスカメラ「EOS R5」/交換レンズ「RF24-70mm F2.8 L IS USM」が贈呈され、次年度における新作個展開催の権利が授与される。
賀来は、「いまこの場所に立てることを非常に嬉しく思っています。僕がこの作品でグランプリを獲るためにずっと支えてくれた友人や大切な人たちがいて、そのような方々に恩返しができたかなと思っています」としつつ、受賞の感想について次のように述べている。
「写真新世紀2017年度で佳作をいただいて、また今回優秀賞をいただいたことで非常に救われました。写真新世紀がなくなってしまうことを聞いたときは本当に驚いて、悲しい気持ちになりました。この写真新世紀が忘れられないように、作家である僕たちが頑張らなくてはいけないと思っています。また、両親とは隔たりがありますが、今回グランプリを受賞したことはしっかり伝えたいと思います」。
今回のグランプリ受賞作品《THE LAKE》は、賀来が冬の3ヶ月間、標高1000メートルを超える山々に囲まれた湖を眺める部屋に滞在し、湖が凍ってから解けるまでを記録したもの。審査員の清水穣は、今回の優秀賞作品および今年の「写真新世紀」についてこうコメントしている。
「今回の総評としては、『人間と自然の関係性』において自然の脅威をかつてないほど感じ、私たちが生きている文明の脆さや、家の床の下には水がすぐそこまで押し迫っているのではないかといった、人間と自然を分けていたテクノロジーがそこまであてにならないという危機意識の象徴として『水』がほとんどの優秀賞作品のテーマとして共通していた点が面白かったです。また、根源的な条件について考えを巡らせるという点でも今回の優秀賞作品は共通していて、時間と空間、世界と自己など、シンプルだけれども深い問題に写真で立ち向かうという点が共通していたことも、最後の写真新世紀にはふさわしかったと思います」。
なお、「写真新世紀」の30周年を記念した回顧展が東京都写真美術館および東京・港区にあるキヤノンギャラリーSにて来年秋に開催予定。2022年4月2日まで歴代受賞者の作品のなかから一般投票が行われ、投票により選ばれた作品は東京都写真美術館で展示される。