なぜ「ふくよか」に描くのか? フェルナンド・ボテロの人生に迫るドキュメンタリー映画が公開
ふっくらとしたモチーフを描く独自の作風で知られるコロンビアの巨匠、フェルナンド・ボテロ。その人生に迫るドキュメンタリー映画『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』が4月29日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショーされる。
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人物や動物、果物、花にいたるまで、あらゆる対象がふくらんでいる作風で知られるフェルナンド・ボテロ。その人生に迫るドキュメンタリー映画が、4月29日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次ロードショーされる『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』だ。
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フェルナンド・ボテロは1932年生まれ。50年代後半から欧米で高く評価され、今日では現代を代表する美術家のひとりに数えられている。ボテロに注目が集まったのは1963年、ニューヨークのメトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が展覧されたとき。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のエントランス・ホールにボテロの《12歳のモナ・リザ》が展示されたことから始まった。
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その作品を特徴づけるのは、あらゆるかたちがふくらんでいることだ。ボテロのボリュームへの関心は、17歳の頃描いた作品《泣く女》(1949)にすでに見出され、その後、ヨーロッパ、とくにイタリアで学んだ経験は、ボテロ作品のボリューム感、官能性、デフォルメ表現に対する基盤を確固たるものにした。
本作は、ボテロ本人に加え、ボテロの子供や孫たち、アート関係者らのインタビューによって構成されたドキュメンタリー。幼い頃に父を失った貧しい少年が、闘牛学校に通いながらスケッチ画を描いていた原点から、対象物をぽってりと誇張する「ボテリズム」に目覚めた瞬間、そしてアート界で成功を収めていくまでを追いかけたものだ。
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「芸術は楽しくなくちゃ」。ボテロの作品は素朴でユーモアあふれるものが多いが、コロンビアでの爆弾テロやアブグレイブ刑務所における捕虜虐待など、社会的な悲劇も絵画として残している。なぜボテロは絵を描くのか。そして芸術の役割とはなんなのか。本作はボテロというひとりの画家を通して、普遍的な問いも投げかけている。
なお今年はボテロ本人の監修のもと、初期から近年までの油彩、水彩・素描作品など全70点を展示する回顧展「ボテロ展 ふくよかな魔法」が、Bunkamura ザ・ミュージアム、名古屋市美術館、京都市京セラ美術館で開催。2020年制作の《モナ・リザの横顔》が世界初公開されるほか、展示作品のほとんどが日本初公開。映画とともに実作品も楽しみたい。
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