1位はナン・ゴールディン。2023年アート界の「Power 100」ランキングが発表
イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が毎年発表している、アート界でもっとも影響力のある100組のランキング「Power 100」。その2023年版が発表された。
イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が毎年発表している、アート界でもっとも影響力のある100組のランキング「Power 100」。その2023年版が公開された。
『ArtReview』のPower 100は、世界中のアート関係者40名からなる審査委員会の意見をもとに選出されるもので、審査委員会は「過去12ヶ月間に活躍した人物であること」「彼らの活動が現在のアート界を形成していること」「彼らの影響力がローカルなものではなく、グローバルなものであること」という3つの基準を設けている。
今年1位に輝いたのは、アーティストのナン・ゴールディンだ。ゴールディンは、自身が陥ったオピオイド中毒について、事態改善を訴える団体「P.A.I.N」を設立。オピオイドの普及のきっかけをつくったサックラー一族の名を冠するメトロポリタン美術館「サックラー・ウィング」で抗議行動を行うなど、この問題について闘い続けてきた。2019年にもPower 100で2位にランクインしたゴールディン。今年はゴールディンの闘いを描いたローラ・ポイトラス監督のドキュメンタリー映画『すべての美と流血(All the Beauty and the Bloodshed)』が第95回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされるなど、あらためてその活動に光が当てられた年でもあった。
『ArtReview』は彼女が1位に輝いた理由として、「ゴールディンは、たんなる記録者、目撃者ではなく、スポークスパーソン、内部告発者、活動家、倫理的発言者としてのアーティストのもっとも目に見える顕著なモデルとして、このリストのトップを飾っている」としている。
続く2位は、ポスト・インターネット・アートの先駆者であるヒト・シュタイエル。今年、ヘイワード・ギャラリーで開催された展覧会「Dear Earth: Art and Hope in a Time of Crisis」に参加したシュタイエルは、ビール箱とペットボトルでつくられたデジタル・スクリーンで構成された《Green Screen》を発表した。またシュタイエルはコレクターのジュリア・ストシェクの一族が経営する会社がナチスとの共謀を見逃していたと主張し、作品を買い戻すというアクションも起こしている。
3位は昨年の86位から大きく順位を上げたのは、今年の「タイランド・ビエンナーレ チェンライ 2023」をクリッティヤー・カーウィーウォンとともに共同ディレクションするリクリット・ティラヴァーニャ。
そのほか、来年森美術館で個展を開催するシアスター・ゲイツが昨年18位から7位にランクアップしたほか、ギャラリストからは「ガゴシアン」のラリー・ガゴシアン(12位、昨年20位)や「ハウザー&ワース」のイワン・ワース、マヌエラ・ワース、マーク・パイヨ(14位、昨年17位)、「ペース」のマーク・グリムシャー(20位、昨年23位)、「ペロタン」のエマニュエル・ペロタン(23位、昨年46位)などが順位を上げている。また今年ようやく世界に対して門戸を開いた香港の巨大ミュージアム「M+」(開館は2021年)を率いるスハーニャ・ラフェル(ディレクター)とドリョン・チョン(チーフキュレーター)のコンビが17位(昨年56位)に躍り出た。
日本との関連では、「あいち2025」で初の外国人芸術監督となる、シャルジャ美術財団の理事長で国際ビエンナーレ協会会長のフール・アル・カシミが昨年50位から36位にランクアップ。また、今年設立された「国立アートリサーチセンター」のセンター長に就任した森美術館館長・片岡真実が64位(昨年69位)にランクイン。アートウィーク東京の共同設立者でギャラリー・タケニナガワの代表である蜷川敦子が昨年(初登場)の順位93位をキープした。