「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2024」の大賞が発表。等身大のセラミック彫刻を制作したアンドレス・アンサが受賞
クラフトマンシップを顕彰するため、2016年にロエベ ファンデーションによって設立された「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」。今年の大賞と特別賞受賞者が発表された。
2016年にロエベ ファンデーションが設立した「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」。今年の大賞がアンドレス・アンサ(メキシコ)による《I only know what I have seen》(2023)に決定した。
本プライズは「ロエベ」のクリエイティブ・ディレクターで、ジョナサン・アンダーソンが考案したもの。今日の文化におけるクラフトの重要性を認識し、顕彰することを目的としている。
今回の「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2024」の大賞は、デザイン、建築、ジャーナリズム、批評、キュレーションなど各界の第一線で活躍する審査員によって、30名のファイナリストのなかから選出された。
大賞を受賞したアンドレス・アンサは1991年メキシコ生まれでサン・ペドロ・ガルサ・ガルシア在住。2014年にモンテレイ大学で学士号を取得し、各国で個展を開催。モンテレイで開催された「エマージング・アート・ビエンナーレ」(2015)でEncouragement to Create awardを受賞、「メキシコ国立自治大学ビエンナーレ」(2016)では佳作を受賞している。
受賞作となったアンサの等身大のセラミックの彫刻《I only know what I have seen》は、まるで人間であるかのような存在感を持つ作品だ。具象的でもあり抽象的でもあるその擬人化されたフォルムは、何千個ものセラミックの小さなスパイク状の突起を組み合わせて構成されている。一つひとつがパズルのようにパーツを構成し、建築的ともいえる意図と精度を持って組み立てられた。
特別賞には浅井美樹《Still life》、エマニュエル・ブース《Coffee Table 'Comme un lego'》、ヒキャン・キム《#16》(すべて2023)が選ばれた。
浅井は1988年生まれ、愛知県在住のコンテンポラリージュエリー作家。 2011年武蔵野美術大学を卒業後、グラスゴー美術学校で銀細工とジュエリーデザインを学び2017年に卒業した。 2021年より名古屋芸術大学デザイン領域の講師を務めている。
受賞作の《Still life》は、精巧なミニチュアの容器が置かれふたつの彫刻的なリングで構成される作品で、複雑さと荘厳さの組み合わせが審査員から高評価を受けた。また、かたちを自由自在に操り、漆と卵殻を巧みに扱う技術も審査員に評価された。
ブースは1969年フランス生まれで、現在はドイツ・マンハイム在住。98年にパリで陶芸家としての修行をはじめ、00〜03年にはブルゴーニュでジャン・ジレルに師事した。11年、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで博士号を取得している。
受賞作《Coffee Table 'Comme un lego'》は 98個の中空磁器レンガでつくられたテーブルだ。遊び心を感じさせるいっぽうで脆さが秘められており、レンガは個別に動かせるという機能性を持つ。
キムは1982年韓国生まれ、米・ウィーホーケン在住。ソウル大学でメタルアートとジュエリーの学士号を取得し、その後ニューヨークのロチェスター工科大学で木工細工と家具デザインの修士号を取得。現在は、パーソンズ美術大学およびニューヨーク市立大学シティ・カレッジの教員としてプロダクトデザインと彫刻を教えている。
受賞作《#16》は、大きな彫刻のような器だ。現代の幾何学的、建築的デザインの新たな可能性を探求するキムの表現が結実した作品ともいえ、トネリコ材と銅線を用いた造船の伝統技法や素材を応用している。
最終選考に残った30点は、6月9日まで、パリのパレ・ド・トーキョーで展示。なお、エキシビションはオンラインでも閲覧可能だ。