2024.11.22

ロッテルダム、2025年に2大美術館が開館。「移民」と「写真」に特化

2025年、オランダ・ロッテルダムに2つの新しい美術館がオープン。移民をテーマにした美術館「Fenix」と、歴史的な建物に移転するオランダ写真美術館だ。

Fenixのイメージ MAD Architects
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 オランダでアムステルダムに次ぐ人口第2の都市であるロッテルダム。ここに2025年、2つの新しい美術館がオープン。さらに国際的なダンスハウスの建設計画も発表された。

 これらは、オランダの「Droom en Daad」財団とロッテルダム市による包括的な長期文化投資計画の一環であり、音楽、文学、公園の整備、そしてパブリック・アートの委託作品など多岐にわたるプロジェクトが進行中だ。

 2025年5月16日に開館予定の新美術館「Fenix」は、移民をテーマにした国際的な美術館で、中国の建築事務所MADが設計を手がけるヨーロッパ初のミュージアムプロジェクトとなる。この美術館は、かつてのホーランド・アメリカ・ライン本部を望むカテンデレヒト地区に位置し、1923年に建てられた歴史的倉庫を改修したもの。かつての赤線地帯であり、ヨーロッパ本土最古のチャイナタウンとしての歴史を持つこの港湾エリアは、地域に根ざした文化の拠点として新たな息吹を吹き込む場へと生まれ変わる予定だ。

Fenixのイメージ MAD Architects
Fenixの内部 © Wilbert Zuiderduin

 こけら落としの企画展「All Directions: Art That Moves You」では、フランシス・アリスやソフィ・カル、ウィリアム・ケントリッジ、スティーブ・マックイーン、グレイソン・ペリーなど世界各地のアーティストによる作品150点が展示される。また、個人の移民体験を語る記念品や、ベルリンの壁の一部などの歴史的な資料も紹介される。

フランシス・アリス Geographies 2007-08 Collection Fenix

 加えて、1955年にニューヨーク近代美術館で開催されたエドワード・スタイケンの「The Family of Man」にインスパイアされた「The Family of Migrants」という写真展も行われる。19世紀末から現代に至る移民をテーマにした194点の写真が取り上げられる。

 また、同年後半にはオランダ写真美術館が、新たな拠点として歴史的建造物「サントスビル」に移転する。同館は写真の展示、保存、収集、研究を専門とする美術館。その所蔵品は650万点を超え、世界最大規模の写真コレクションを誇る。

オランダ写真美術館の外観 © Photo Studio Hans Wilschut

 1903年にブラジル産コーヒーの倉庫として建てられた新拠点の建物は、美しく改修され、ロッテルダムの中心部にある象徴的なランドマークとして再びその役割を果たす。8階建ての鋳鉄製の柱で支えられたこの建物では、広大な展示スペースをはじめ、写真専門の書店や図書館、教育センター、コミュニティスペース、プロ・アマチュア向けの暗室、さらにロッテルダムのスカイラインを一望できる屋上レストランを備える。また、収蔵品と保存作業を収容する最新の気候制御設備も設置される。来館者はガラス越しに修復や保存の専門家たちが作業する様子を観察することができ、館内は写真芸術の舞台裏を体験できる空間となる。

オランダ写真美術館の内部 © Photo Studio Hans Wilschut

 さらに、2025年には「Danshuis」という新しい国際ダンスセンターの建設が始まる。この施設はFenixの隣接地に建設される予定で、建築事務所MADが引き続き設計を担当する。クラシックバレエからヒップホップ、タンゴ、フォークダンスに至るまで、あらゆるジャンルのダンスに対応する最先端のパフォーマンススペースが計画されており、2030年の完成を目指している。

 Droom en Daad財団のディレクターであるウィム・パイベスは、「ロッテルダムは国際貿易の拠点としての歴史や、デ・ステイルやレム・コールハースの建築をはじめとする現代建築で知られる港湾都市としての特徴を活かし、2020年代におけるヨーロッパの文化発展の象徴的都市となるだとう」と期待を寄せている。

Fenix © Henry Verhorst