2017.11.3

第12回西洋美術振興財団賞、「ミュシャ展」本橋弥生らが受賞

西洋美術振興財団が主催する「第12回西洋美術振興財団賞」の授賞式が10月27日に東京・上野の精養軒で行われ、学術賞2名と文化振興賞1件の受賞者がそれぞれコメントを発表した。

左から塚田美紀(世田谷美術館主任学芸員)、本橋弥生(国立新美術館主任研究員)、佐竹葉子(LIXIL広報部部長)

 「西洋美術振興財団賞」は、最近2年間に国内の美術館で開催された西洋美術に関する展覧会の関係者を対象に、西洋美術研究の発展に顕著な業績があった個人(学術賞)及び団体(文化振興賞)を懸賞するもの。2006年の第1回以来、数多くの学芸員・研究者が受賞してきた。

 第12回目となる本年、学術賞を受賞したのは世田谷美術館主任学芸員・塚田美紀(アルバレス・ブラボ写真展ーメキシコ、静かなる光と時)と、国立新美術館主任研究員・本橋弥生(ミュシャ展)の2名。文化振興賞はINAXライブミュージアム10周年特別展「つくるガウディー塗る、張る、飾る!」を開催したLIXILに贈られた。

 審査委員は、早稲田大学名誉教授・大高保二郎、東京都写真美術館事業企画課長・笠原美智子、多摩美術大学学長・建畠晢、武蔵野美術大学教授・松葉一清、東京大学大学院教授・三浦篤の5名。

 塚田の「アルバレス・ブラボ写真展」は、20世紀の写真史において独自の足跡を残したメキシコの写真家、アルバレス・ブラボの日本初の回顧展。選評では、貴重なメキシコ作家を取り上げた展覧会として、「貴重で思索的で刺激的。塚田の経験と蓄積が活かされてのものであり、学術的にも十分に懸賞に値する」と評価された。

 一方、本橋の「ミュシャ展」は、チェコ国外で初めてミュシャの代表作である「スラヴ叙事詩」20点を全点展示したもので、65万人以上の入場者数を記録。大きな話題を呼んだ。同展については「展覧会という通念を塗り替えるほどの強烈なインパクト」「国立新美術館ならではの空間を活かしてのスペクタルな展示と歴史を語らせる作品の流れは懸賞に値する」との評価が与えられている。

 また、LIXILが開催した「つくるガウディー塗る、張る、飾る!」は、スペインの巨匠、アントニオ・ガウディを人の手で「つくる」視点から紐解き、建築家と職人がその表現の可能性を公開制作で見せた。この展覧会に加え、東京と大阪のLIXILギャラリーにおけるタイル文化の啓蒙と現代美術の活性化など、長年にわたる活動が評価されたかたちだ。

 なお、学術賞受賞者にはそれぞれ賞状と賞金50万円が、文化振興賞には賞状とトロフィーが贈られた。