ファンタジーを失った時代を象徴する新たな彫刻。三矢直矢の個展「Realism」が開催
大理石やブロンズといった伝統的な素材による西洋彫刻に向き合いながら、創作を続けてきた彫刻家・三矢直矢。その新作個展が東京・神宮前のnomadicaで開催される。会期は2019年8月23日〜9月1日。
三矢直矢は1984年東京都生まれの彫刻家。2013年に東京芸術大学大学院美術研究科を修了し、16年に「for the Greatest Moment」(nomadica、東京)、18年には「Bronze World」(nomadica、東京)と個展を開催。積極的な作品発表を続けてきた。
8月23日より東京・神宮前のnomadicaで始まる個展「Realism」にて、三矢は新作7点を発表する。新作で三矢は19世紀にギュスターヴ・クールベにより提唱され、いまもなお強い影響力を持つリアリズム絵画を、自分なりに解釈しブロンズ彫刻に落とし込んだという。制作から展示までのスピード感を重視し、落書きした絵から即時的に小サイズの彫刻をつくりあげることで、現代のありのままの生活をリアリズムとして表現した。
もともと西洋美術に憧れがあり、大理石やブロンズといった外来の素材を用いて作品をつくってきた三矢。しかし、自身は西洋に住んだこともなく、素材に触れて育ってきたわけでもないため、自分の作品は中身のないフェイクだと考えるようになったという。
「記憶の中の教科書や図録の写真から表層的なイメージを取り出し、無内容な彫刻をつくることで造形美術の残された可能性を模索する。ファンタジーを失った現代をさまよう、自分自身を象徴できたら」と語る三矢。
三矢が自身のこれまでの創作と現在を見つめながら、新たな彫刻の可能性を探り出す展覧会だ。