ミュージアムは持続可能な社会にどう貢献すべきなのか? ICOMでセッション開催
国立京都国際会館で開催中の第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会。その初日に、プレナリーセッション「博物館による持続可能な未来の共創」が行われた。国際連合が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」と博物館はどう関わっていくのか?
2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟国が16年〜30年の15年間で達成するための目標「持続可能な開発目標(SDGs)」。これは、貧困やジェンダー平等、気候変動問題などを含む17の目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されたものだ。
このSDGsとミュージアムの関係性を問いかけるプレナリー・セッション「博物館による持続可能な未来の共創」が、第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会の初日にメインホールで行われた。モデレーターを務めたのは、バランジャー博物館開発顧問でICOM続可能性ワーキンググループ(WGS)委員長のモリアン・リーズ。
6人のスピーカーの先陣を切ったのは、Sustainable Museums代表のサラ・サットンだ。サットンは、気候変動に関する国際的枠組みである「パリ協定」離脱を決定したアメリカにおいて、同国内の文化機関によるパリ協定の支援を促進するNGO「We Are Still In」の実行委員会委員も務める人物。
サットンは、ミュージアムについて「慈善施設であり、公益財。地球を救い、世界を癒すのが世界共通のミッション」と明言する。「ミュージアムはそのなかに、様々な能力、クリエイティビティ、力を持っている。これは世界がもっとも必要としている変化を起こすためのものです」。それぞれのミュージアム関係者個々人の取り組みを前提に、それをミュージアムにおける実践にも応用していくべきだとし、連帯を呼びかけた。
いっぽう、世界初の気候変動のミュージアムとして2013年に香港に開館した競馬会気候変動博物館で館長を務めるセシリア・ラムは、ミュージアムを通して気候変動問題への啓蒙活動を行うことが同館のミッションであるとし、移動型の展示システム「モバイル・ミュージアム」などの実践を紹介。
南アフリカから来日したボニタ・アリソン・ベネットは、コミュニティとの関係性という視点からミュージアムが取り組むべきSDGsについてプレゼンテーションを行った。
ベネットは、アパルトヘイト政策によって破壊されたケープタウンの地区「ディストリクト・シックス」に立つディストリクト・シックス博物館館長。「ミュージアムは人々から隔離された特別な場所ではなく、意味のある関与をすることができる可能性を持つ機関」としながら、コミュニティの記憶を保持する機関としての同館の役割について説明。ミュージアムが先住民の知識や、伝統工芸といったソフト面での教育も担うこと、そして土地を追われた人々の公正を守ること、持続可能な街をつくることへのコミットメントの重要性を説いた。
日本でも、SDGsの達成に向けて科学館が活動を推進していくことに合意した行動指針「東京プロトコール」が2017年にまとめられたほか、「あいちトリエンナーレ2019」ではジェンダー平等を掲げて実現したほか、新居浜ではSDGsをテーマにした公募型美術展「にいはまSDGsアート・フェスティバル2019」(〜10月18日)が開催されるなど、わずかながらミュージアムあるいはアート界がSDGsへのコミットメントを高めている。
今回のセッションでは、ミュージアムがコミュニティとつながることや、ミュージアム自身がその可能性を信じることの重要性などが語られた。このようなポイントを押さえつつ、2030年に向けて、ミュージアム界はさらに具体的な施策を実行していくことが求められるだろう。