アーティゾン美術館の建物が公開。無柱展示室や16メートルの吹き抜けも
東京・京橋の老舗美術館「ブリヂストン美術館」が今年、「アーティゾン美術館」として生まれ変わった。2020年1月18日の開館を目指す同館は、どのような特徴を持った美術館なのか? その施設内見会の様子をお届けする。
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ブリヂストン美術館を前身とするアーティゾン美術館が、2020年1月18日に開館する。これを前に、施設の内部が報道陣に公開された。
アーティゾン美術館は、2024年6月にグランドオープン予定の開発街区「京橋彩区」に位置する、地上23階建ての「ミュージアムタワー京橋」の低層部(1~6階部分)に入居。建設費は約160億円で、延べ床面積は旧来の2.3倍となる6715平米、展示室の総面積は約2倍となる2100平米と、大幅に拡大した。館内は、大きくミュージアムカフェやショップ、レクチャールームなどが入る1〜3階部分の「フリーゾーン」と、4~6階の「展示室ゾーン」で構成されている。
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正面入口は、これまでの八重洲通り側からメインストリートである中央通り側に移動。1~2階は高さ8メートルもの高透過大型ガラスで囲まれており、開放感ある空間を実現した。また、1階カフェ部分の9枚の大型ガラスは電動回転扉となっており、内外をつなぐオープンカフェとして街に開かれたものとなる。また展示室への入口となる3階にも、5階までを貫く高さ16.5メートルもの吹き抜けがあり、アーティゾン美術館は外光あふれる館と言えるだろう。
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展示室へ向かうすべての来館者が通るのは、高性能の危険物検知ボディスキャナーだ。日本でこれほどのセキュリティシステムを導入している美術館はほとんど存在しない。
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展示用に幅15メートルの一枚ガラスも開発
美術館の要となる展示室にも特徴がある。すべての展示室にはひとつも柱がないため、空間を展示のために最大限利用できる。この無柱展示室は、アーティゾン美術館には免震構造が採用されていることから実現した。
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また空調は、足元のフローリング床の目地を吹き出しに利用した置換空調システムを採用。温湿度のムラがない、鑑賞者にも作品にも優しい室内環境を生み出すことが可能となっている。加えて、同館ではYAMAGIWAとともにオリジナルLEDを開発。スポットライトを1灯から個別に設定することができ、よりフレキシブルな表現ができるという。
これらは3フロアの展示室に共通するポイントだが、各フロアはそれぞれに特色を持つ。展示順路である6階から見ていこう。
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6階は、ひとつの展示室としてはもっとも巨大なスペース。天井を貼らない構造となっており、1平米あたり100キロの作品を吊り展示することも可能だという。年間1~2回予定されている現代美術展を想定した展示室だ。
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続く5階は6階同様、自由なレイアウトが可能なマルチユースな空間。室内には、4階を見下ろせる高さ11メートルの吹抜部分があり、展覧会によっては、順路の先が見える立体的な構造となっている。
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4階は、石橋財団コレクションを中心に展示するためのフロアで、3つの小部屋が特徴的だ。とくに注目したいのは、古美術のため黒壁の部屋。ここには、新たに開発された幅15メートルにわたる低反射の一枚ガラスがはめこまれており、屏風などとじっくり向き合って鑑賞することが可能となっている。
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また4階には、旧ブリヂストン美術館の展示室を再現したような、下がり天井の展示室もあり、往年のファンにはたまらない空間と言えるだろう。
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なお、4・5階にはビューデッキが設けられ、ベンチでの休憩も可能。過去の図録などを閲覧できるインフォルームも4階にある。
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デジタルコンテンツにも注目
同館では建物以外でも注目すべき点が複数ある。それがデジタル関連の取り組みだ。
まず、原則すべての展覧会については待ち時間解消のためウェブ予約による「日時指定予約制」を導入。詳細は明らかにされていないが、日本の美術館では稀有な取り組みとなるだろう。
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4・5階には、所蔵品や展覧会に関する高精細画像を閲覧できる「デジタル・コレクション・ウォール」を設置。チームラボとコラボレーションして開発したというこのコンテンツは、コレクションへのアクセシビリティを高める施策だ。加えて独自の無料アプリも開発し、11月にリリース予定。館内フリーWi-Fiの整備など、様々な点でデジタル化が促進されている。
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ゼロから「新しい美術館」をつくるという意気込みで誕生したアーティゾン美術館。21世紀の新たな美術館として、日本の美術界にどのようなインパクトをもたらすのか、期待が高まる。