グッチの広告キャンペーンに見る、そのクリエイティビティの源。「Gucci Garden Archetypes」展が開幕
グッチのクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレが手がけた広告キャンペーンを通し、グッチの哲学をたどる没入型エキシビション「Gucci Garden Archetypes(グッチ ガーデン アーキタイプ)」が、東京・天王洲で開幕した。その見どころをレポートでお届けする。
2015年よりグッチのクリエイティブ・ディレクターを務めているアレッサンドロ・ミケーレ。アレッサンドロが手がけた広告キャンペーンを通してグッチの哲学をたどる没入型エキシビション「Gucci Garden Archetypes(グッチ ガーデン アーキタイプ)」が、9月23日に東京・天王洲でスタートした。
アーキタイプとは、様々なイメージの源となる存在=元型を意味する言葉。本展では、グッチの広告キャンペーンに登場した様々な要素を再現もしくは再構成することで、アレッサンドロが描くビジョンと美学、そのインスピレーションの源を探り、鑑賞者を万華鏡のように壮大な旅へと誘う。
本展は、数十台のモニターが展示される「Control Room」から始まる。それぞれのモニター画面にはグッチの広告キャンペーンの映像が映し出されており、映像と音声が絶えず変化するモニター群は祭壇画のようなもので、アレッサンドロの多元宇宙のようなクリエイティビティへの扉を開く。
2018年秋冬コレクションの広告キャンペーンをイメージし、偏執狂的で圧倒的な情熱にとりつかれたグッチコレクターの世界を再現した「Gucci Collectors」と、2020年春夏コレクションの広告キャンペーンで主役を務めた馬をメインモチーフに、グッチのグローブやバッグ、ブーツなどを配置した機械人形のようなインスタレーションを展示する「Of Course A Horse」を経て、次はグッチのメイクアップライン「Gucci Beauty」に注目した展示だ。
2面の壁に多数のモニターが飾られるこのインスタレーションでは、グッチリップスティックの広告キャンペーンをそれぞれのスクリーンに映し出している。アレッサンドロは、メイクアップを自由で制約のない、欠点さえも美しさを伝える自己表現としてとらえている。本作では、様々な人が唇に口紅を塗ったり舌で歯を舐めたりする様子をとらえた映像を組み合わせることで、多様な美の基準を讃えている。
「Tokyo Lights」は、東京を舞台とした、グッチの2016年秋冬コレクション広告キャンペーンの世界観を表現したインスタレーション。伝統的な日本の家屋やパチンコ店、デコトラ、夜の繁華街が撮影されたこのキャンペーン。会場では、まばゆい光が放たれたトラックや虹色のネオンで縁取られたショーウィンドウが再現されており、アレッサンドロが魅せられた日本のハイパーテクノロジーの美学が輝いている。
続く「Dans Les Rues」は、フランスの「五月革命」から50年目を迎えることをきっかけに、グッチ2018年プレフォール コレクションの広告キャンペーンをイメージしたインスタレーション。
学生たちと労働者が連帯し、社会不安と文化の刷新に向けて声を上げ、あらゆる種類の権威に対して多面的な抵抗を挑んだ五月革命。会場の壁には「Liberté! Egalité… Sexualité?(自由、平等、セクシュアリティ)」「Tourne Ton Visage au Soleil(太陽に顔を向けよ)」「Re(belle) Re(belle)([美しき]反乱)」など、当時デモに参加したパリの若者たちのスローガンとメッセージが書かれており、コレクション名「Gucci Dans Les Rues」もそのうちのひとつである「美は路上にある」から由来するものだという。
そのほか、ロサンゼルスの地下鉄を舞台に展開した2015年秋冬コレクションの広告キャンペーンを再現した「Urban Romanticism」や、2016年春夏コレクションに出現したベルリンのクラブの化粧室を再現した「Rebellious Romantics」、1960年代から1970年代にかけてのSF映画からインスピレーションを得た2017年秋冬コレクションを表現した「Gucci And Beyond」などの展示も本展で見ることができる。
詩的でありながらディテールへの情熱をもってあらゆるクリエイティブな表現を追求するアレッサンドロ・ミケーレ。その創造の源を探り、グッチ世界のアーキタイプをたどる機会をお見逃しなく。