平松典己、ルーカス・ルスター「Moon River」

　CAGE GALLERYで、平松典己、ルーカス・ルスターによる二人展「Moon River」が開催されている。

　平松は日本大学芸術学部を卒業後、カールスルーエ美術大学で絵画を学び、現在も同地で制作を行う。平松の絵画は、特定のモチーフから出発することなく描かれ始め、コンポジションと色彩の中から事後的にモチーフを見つけるようにして描かれる。

　ルスターは、記憶、憧れ、ポップカルチャーや美術史の引用のあいだを揺れ動きながら、テキスタイル、身体的な感触、親近感といった感触を、絵画というメディアそのものが持つ感覚と同居させようと試みる。見たもの、読んだもの、聞いたもの、記憶のなかのもの、想像したものから自由に生まれ、統合されるように描く。

　本展「Moon River」は、東京とカールスルーエという、物理的な距離へのまなざしが投影される。展覧会を拡張すべくアーティストたちは、サテライトスペースとして、カールスルーエにもうひとつのウィンドウギャラリーを用意した。それは、東京とカールスルーエがウィンドウ＝窓によってつながれ、絵を見ることを通して二つの場所を行き交う、ささやかな試みだ。加えて、平松、ルスターと親交のある画家、フローラ・フリッツにより本展のために書かれたエッセイは、現地での鑑賞体験を拡張すべく、想像上の第三の窓として位置付けられる。それぞれのウィンドウには、平松とルスターの絵画のほかに、カールスルーエのとある場所を写した写真（カールスルーエのウィンドウギャラリーには東京の写真）が置かれる。