EXHIBITIONS

布施琳太郎「名前たちのキス」

2021.05.28 - 06.26

本展DM(デザイン:八木幣二郎) 

 アーティスト・布施琳太郎の個展「名前たちのキス」がSNOW Contemporaryで開催される。会期は5月28日~6月26日。

 1994年生まれの布施は、絵画や映像、iPhoneや印刷などの多岐にわたるメディアを用いながら、展覧会企画、批評などの他分野においても意欲的な活動を行っている。スマートフォンの登場以降に構築された「錯乱した現実」を、数万年前に洞窟壁画を描いた人々の自然への向き合い方と対照する企画展「iphone mural(iPhoneの洞窟壁画)」(BLOCK HOUSE、東京、2016)で注目を集めると、徹底的に情報化した都市における芸術のあり方を提起する論考「新しい孤独」(2019)を発表。

 また新型コロナウイルスの感染拡大のなかで「一人ずつしかアクセスできないウェブページ」を用意して展覧会「隔離式濃厚接触室」(2020)を開催するなど、急速に発達するメディアによって変化する人間の意識や行動、それによる社会と人の距離やコミュニケーションのあり方など、可視化されない、しかし確実に存在する問題意識や違和感を感じ取り、同世代のアーティストや詩人、音楽家、デザイナーなどと協働して、それらを巧みに顕在化する活動が高く評価されてきた。

 昨今の密を避ける生活様式下において、マッチングアプリの需要が急増しているというニュースに興味を引かれた布施。ハンドルネーム同士で出会い、本当の名前すら知らないままに関係を深める人々のあり方が一般化した状況から、「恋人たちの共同体」について改める考えを深めることになったと言う。

 本展では、「名前」に着目した新作の映像作品1点を中心とし、数点のスプレー絵画とともに発表。本展を通じ、変わりゆく社会の意識や価値を布施がどうとらえ、かたちにするのか注目したい。