EXHIBITIONS

写真の写真と写真

高松次郎 写真の写真 1973 © The Estate of Jiro Takamatsu Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 ユミコチバアソシエイツでは、展覧会「写真の写真と写真」を開催している。出展作家は、高松次郎、鷹野隆大、オノデラユキ、椎原治、ヴォルス、ウジェーヌ・アジェ。

 複製、記録技術として発明された写真の歴史は、同時に、写真が芸術や表現の世界に進展し、展開される歴史でもあった。そのことによって写真は、これまでにない、表現性、政治性、技術的な実験性などを獲得していくこととなる。

 写真の歴史は、「写真とはなにか」「写真でなにができるのか」という問いをつねに探求し、不断に更新する試みでもあったことを前提する本展は、そうした試みのなかから、6人のアーティストの写真作品を紹介する。

 活動初期から一貫して、物質・実体・言葉・空間について検証するかのように作品を制作し続け、コンセプチュアル・アートに大きな影響を与えた高松次郎、セクシュアリティをテーマに、二項対立の狭間にある曖昧なものを可視化することを写真作品で試みてきた鷹野隆大、世界の模倣、写し、記録装置としての写真の在り方に揺さぶりをかけ、世界的に評価されるオノデラユキ。関西の丹平写真倶楽部の中心メンバーだった椎原治は、フォトグラムやソラリゼーションなどの特殊技法を駆使して、近代的な作品を数多く残し、ヴォルスは、1930年代にまず写真家として認められ、第二次世界大戦後はカメラを筆に持ち替え慣例にとらわれない描法で油彩や水彩などを描き、死後に「アンフォルメル」の先駆として評価された。そして、約30年にわたって変わりゆくパリの街や建築などを撮影し続けたウジェーヌ・アジェは、その作品がアンドレ・ブルトンをはじめとするシュルレアリストからも高く評価され、「近代写真の父」と呼ばれている。

 6人はメディアとしての写真の可能性を拡張し、またコンテンポラリー・アートの世界における重要な表現手段として写真が位置づけられる過程で、実験的な写真作品を制作した、あるいは実践を続ける作家たち。本展はそれぞれの仕事を通して、現代における写真表現の拡がりに焦点を当てる。