EXHIBITIONS

名和晃平「TORNSCAPE」

2021.11.02 - 12.18

名和晃平 Tornscape 2019 Photo by Nobutada OMOTE|Sandwich

  SCAI THE BATHHOUSEでは、名和晃平の個展「TORNSCAPE」を開催する。会期は11月2日~12月18日。

 名和は1975年生まれ。京都を拠点に活動している。感覚に接続するインターフェイスとして、彫刻の「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸として、2002年に情報化時代を象徴する「PixCell」を発表。刻々と変化する素材のフォルムに有機的なイメージを交差させ、鑑賞者の視触覚を刺激する新しい彫刻の在り方を打ち出してきた。

 ギャラリーの空間全体を映像と音で満たす本展では、スクリーンがあたかも地球を取り巻く大気や海のように、情報を伝える皮膜となって鑑賞者を包み込む。

 一面に広がる仮想ランドスケープの上を、異なる特性を持つ流体がうごめき合い反応変化し続ける映像インスタレーション「Tornscape」(2019~)。名和が、災害と疫病に見舞われた800年前の随筆、鴨長明『方丈記』を参照し手がけた本作は、生まれては消える泡のように無常な世界を描き出し、今日の時代に共鳴する。

「Tornscape」ともつながる「Black Field」(2020〜)は、油絵具と油を混合した素材でつくられたペインティング・シリーズ。濡れた黒い土壌を思わせる、パネルに積層したメディウムの皮膜はやがてひび割れ、裂け目から吹き出す液体が新たな時間軸を生み出す。

 流体の運動を水平方向に捉えるこの視点は、シリーズ「Dune」(2020〜)にも見て取ることができる。油絵具と粒度の違う絵具や水などを混合し、固有の粘度を持つメディウムを支持体を傾けて広げることでつくられる本作は、地表の隆起や大気の流れを思わせ、仮想のランドスケープを上空からとらえる視点となって本展「TORNSCAPE」の主題を深める。

 また本展にあわせて、SCAI PARKでは名和晃平「MOMENT」展(10月30日〜11月13日)を開催し、新作となる写真シリーズ「Moment Photography」を展示する。