EXHIBITIONS

小倉擬(なぞらえ)百人一首

2022.01.05 - 02.06

歌川広重 光孝天皇 弘化期(1844-48) 公益社団法人 川崎・砂子の里資料館蔵

歌川広重 前中納言匡房 弘化期(1844-48) 公益社団法人 川崎・砂子の里資料館蔵

三代歌川豊国 西行法師 弘化期(1844-48)  公益社団法人 川崎・砂子の里資料館蔵

 川崎浮世絵ギャラリーで、「小倉擬百人一首」全100図を一挙公開する展覧会「小倉擬(なぞらえ)百人一首」が開催される。

 小倉百人一首は、鎌倉時代の歌人・藤原定家が選定したと言われる100首の和歌で、江戸時代にはカルタとして広まった。この小倉百人一首の和歌に擬(なぞら)えた全100図による超大作の錦絵シリーズが、本展で紹介する「小倉擬百人一首(おぐらなぞらえひゃくにんいっしゅ)」だ。

 絵を手がけたのは、幕末の浮世絵界を代表する3人の絵師、歌川国芳、歌川広重、三代歌川豊国。国芳は武者絵、広重は名所絵、豊国(国貞)は役者絵の名手として名を馳せていた。

 また、画中の詞書(説明文)を担当したのは、『白縫譚(しらぬいものがたり)』『児雷也豪傑譚(じらいやごうけつものがたり)』などの長編小説で知られる人気戯作者の柳下亭種員(りゅうかてい・たねかず)で、この豪華メンバーによる「小倉擬百人一首」は、天保の改革の影響がいまだに残る弘化期(1844〜48)に版行された。

「小倉擬百人一首」の各図様は一見、武者絵や故事絵のように見えるが、じつはその多くは歌舞伎の名場面に取材したもの。天保の改革の一環で、役者絵が禁止されたため、浮世絵師たちはなんとか知恵を絞って、役者を描こうとした。本シリーズでは、図を武者絵や故事絵風に描き、さらに「小倉百人一首」という古典要素を取り入れることで、教養的な絵であるとアピールした。苦肉の策ではあったが、これがかえって雅俗混淆の妙となり、作品に機知に富んだ味わいをもたらしている。

 本展は、「小倉擬百人一首」全100図を一挙公開。浮世絵の3大巨匠が百人一首の世界で繰り広げる夢の共演を楽しんでほしい。