カルティエからバスキア、未来の芸術まで。2019年秋に注目したい13の展覧会
秋は美術館の大型展覧会が目白押しのシーズン。日本各地で行われるジャンル豊富な展覧会のなかから、編集部注目の13の展覧会を会期順に紹介する。
初期から最晩年まで会期中150点以上が集結。「没後90年記念 岸田劉生展」(東京ステーションギャラリー)
日本近代美術史のなかでも、その独自な変遷が高く評価される画家、劉生の大規模な回顧展が東京ステーションギャラリーで開催中。
画家として自己の道を探求し続けた岸田劉生は、転機が訪れるごとにその作風を展開させてきた。本展では作品を制作年代順に並べ、彼の画業の独創的な歩みに注目。重要文化財の《道路と土手と塀(切通之写生)》や《麗子肖像(麗子五歳之像)》、最新の修復品などを含め、日本各地から厳選された作品が一堂に集結する(一部展示替えあり)。
会期:2019年8月31日〜10月20日
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
電話番号:03-3212-2485
開館時間:10:00~18:00(金〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、9月16日、23日、10月14日は開館)、9月17日、9月24日
料金:一般 1100円 / 大学・高校生 900円 / 中学生以下無料
ゴッホ、ルノワール、マネなど豪華巨匠の作品が来日。「コートールド美術館展 魅惑の印象派」(東京都美術館)
1932年ロンドンに、実業家サミュエル・コートールドが収集したコレクションを中心として設立されたコートールド美術館。そのコレクションのなかから印象派・ポスト印象派の作品が多数来日する展覧会が、東京都美術館で開催されている。
ファン・ゴッホによるアルルの風景《花咲く桃の木々》、19世紀後半の近代都市パリの風俗を映すルノワールの《桟敷席》やマネの《フォリー=ベルジェールのバー》をはじめ、絵画・彫刻約60点が展示。また同館は美術史や保存修復において世界有数の研究機関であるコートールド美術研究所の展示施設であることから、本展ではその研究成果にも注目した。画家の語った言葉や同時代の状況、制作の背景、科学調査により明らかになった制作の過程など、作品の新たな一面が見られるだろう。
会期:2019年9月10日~12月15日
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03-5777-8600
開室時間:9:30~17:30(金、11月2日〜20:00)※入室は閉室の30分前まで
休室日:月(ただし、9月16日、23日、10月14日、11月4日は開室)、9月17日、24日、10月15日、11月5日
料金:一般 1600円 / 大学・専門学校生 1300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1000円 / 中学生以下無料
関根伸夫の追悼、そして「もの派」の再考。「DECODE/出来事と記録-ポスト工業化社会の美術」(埼玉県立近代美術館)
今年5月に逝去した、「もの派」を代表するアーティスト・関根伸夫。出身地である埼玉県で、1960年代末から70年代にかけての美術状況を関根の資料などから検証する展覧会が行われている。
関根は1942年生まれ。68年に多摩美術大学大学院油画研究科を修了し、同年「神戸須磨離宮公園現代彫刻展」に出品した《位相ー大地》を李禹煥が評価したことが、「もの派」が始まるきっかけとなった。本展では、国際的に再評価されつつある関根伸夫の資料とともに、「もの派アーカイブ研究」の成果報告、またこれらを「ポスト工業化社会の美術」という広義でとらえた展示を見ることができる。
会期:2019年9月14日〜11月4日
会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
電話番号:048-824-0111
開館時間:10:00~17:30 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし9月16日、23日、10月14日、11月4日は開館)
料金:一般 1100円 / 大学・高校生 880円 / 中学生以下無料
注目アーティスト国内初個展「AKI INOMATA:Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」(十和田市現代美術館)
3Dプリンタを用いて作られた都市を模した殻に、ヤドカリを住まわせる「やどかりに『やど』をわたしてみる」などの作品で注目を集めているAKI INOMATAの、日本の美術館では初となる個展が十和田市現代美術館で開催される。
AKI INOMATAは生物との協働により、人間や社会と生物との関係を再考する作品を多く制作してきた作家。本展では、やどかりの作品以外にも、震災の影響を受けたアサリを観察した作品、小さく刻んだ女性の衣服をミノムシにまとってもらう作品、さらに南部馬を題材とした新作も出品される。通常、作品保護の観点から美術館では生体展示が難しいため、今回の展覧会が貴重な機会となる。
会期:2019年9月14日〜2020年1月13日
会場:十和田市現代美術館
住所:青森県十和田市西二番町10-9
電話番号:0176-20-1127
開館時間:9:00〜17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし9月16日、23日、10月14日、11月4日、1月13日は開館)、9月17日、24日、10月15日、11月5日、12月28日~1月1日、1月14日
料金:一般 800円 / 高校生以下無料
バスキアと日本の知られざる絆。「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」(森アーツセンターギャラリー)
わずか10年の活動期間の中で、80年代のアートシーンに存在感を残したジャン=ミシェル・バスキア。日本オリジナルで、日本初となる大規模展が森アーツセンターギャラリー (六本木ヒルズ森タワー52階)で開催される。
ファッションやカルチャーにいまなお多大な影響を与え続けているバスキアの作品約130点が世界各地から集結。絵画やドローイングに加え、立体作品や映像作品までが一堂に会す。さらに注目したいのは、バスキアが当時バブル景気の日本に影響を受けた作品の数々だ。本展では、バスキア研究で知られるディーター・ブッフハートにより、バスキアと日本の知られざる関係が明かされる。
会期:2019年9月21日~11月17日
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
住所:東京都港区六本木6-10-1
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00〜20:00(9月25日、26日、10月21日〜17:00)※入場は閉館の30分前まで休館日:9月24日料金:一般 2100円 / 大学・高校生 1600円 / 小・中学生 1100円
1970年代以降の現代作品に焦点を当てる。「カルティエ、時の結晶」(国立新美術館)
1847年パリでの創業以来、ジュエリーをはじめとする数々のクリエイションでその名を馳せてきたカルティエ。本展は、初の試みとして1970 年代以降の現代作品に注目し、その独自性を探求する。
本展のテーマである「時間」を軸に、「色と素材のトランスフォーメーション」「フォルムとデザイン」「ユニヴァーサルな好奇心」という3つの章で構成され、伝統を継承しつつ新たな風を吹き込み続けるカルティエの美の秘密に迫る。また、会場構成は杉本博司と榊田倫之による新素材研究所が担当。伝統的な職人の技術を用い、現代的なディテールで仕上げたデザインが展示作品と化学変化を起こす、新たな鑑賞体験が期待できる。
会期:2019年10月2日~12月16日
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:火(ただし、10月22日は開館)、10月23日
料金:一般 1600円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料
「石川直樹展『島は,山。』island ≒mountain」(鹿児島県霧島アートの森)
文化人類学や民俗学の領域に関心を持ち、日本や世界各地の辺境や都市を旅しながら作品を発表し続けてきた写真家、石川直樹。その作品を集めた個展が、鹿児島県霧島アートの森で開催される。
サブタイトルは「『島は,山。』island ≒mountain」。島と山の近似性をテーマに展覧会が構成されている。空から眺めると、まるで海から顔を出した山のように見える島。またかつて民俗学者の柳田国男は、山と島は人間の暮らしそのものが似ている、とも語っていた。こうした考えを起点に、石川が10代の頃から関心を寄せ続けている鹿児島からアジアへと広がる島々の連なりを、写真によって見つめ直していく。
会期:2019年10月4日〜12月1日
会場:鹿児島県霧島アートの森 アートホール
住所:鹿児島県姶良郡湧水町木場6340-220
電話番号:0995-74-5945
開館時間:9:00〜17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:10月7日、15日、21日、28日
料金:一般 800円 / 大学・高校生 600円 /小学・中学生 400円
ゴッホはいかにしてゴッホになったのか?「ゴッホ展」(上野の森美術館)
短命ながら数々の作品でその名を知られるフィンセント・ファン・ゴッホ。今回、上野の森美術館と兵庫県立美術館を巡回する「ゴッホ展」では、彼の画風に大きな影響を及ぼした2つの「出会い」に注目する。
本展では、《糸杉》《麦畑》など重要なモチーフを描いた作品や、日本初公開となる《パリの屋根》など、約40点の貴重なゴッホ作品が世界中から集結。また、10年という短い画業の背景にあったハーグ派と印象派との出会いや、手紙で綴った彼自身の言葉から、その独自の画風のなりたちに迫る。ゴッホの世界に浸るまたとない機会となるだろう。
会期:2019年10月11日〜2020年1月13日
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
電話番号:03-5777-8600
開館時間:9:30~17:00(金土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:12月31日、2020年1月1日
料金:一般 1800円 / 大学・専門学校・高校生 1600円 / 中学・小学生 1000円 / 小学生以下無料
改元の年に見る、日本が受け継いできた美。御即位記念特別展「正倉院の世界ー皇室がまもり伝えた美ー」(東京国立博物館)
この秋東京国立博物館では、天皇陛下の御即位を記念し、皇室により守り継がれてきた正倉院宝物と法隆寺献納宝物を同時公開する。
飛鳥から奈良時代に国内で製作された美術工芸品や文書類のほか、「正倉院はシルクロードの終着点」とも言われるように、古代東西各国から持ち込まれた品々を含めた約110件が展示される。当時の文化、技術に触れるとともに、活発な東西交流の様子を感じ取ることができるだろう。また、1260年以上にわたり宝物を守り伝えてきた正倉院宝庫の、いまなお行われる文化財保存の取り組みにも注目。会場内には一部原寸大で宝庫が再現され、そのスケールを体感することができる。
会期:2019年10月14日〜11月24日(前期10月14日〜11月4日、後期11月6日〜11月24日)
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:03-5777-8600
開館時間:9:30~17:00(金土・11月3日・4日〜21:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし10月14日、11月4日は開館)、11月5日
料金:一般 1700円 / 大学生 1100円 / 高校生 700円 / 中学生以下無料
国内初の大規模個展がついに開催。「カミーユ・アンロ|蛇を踏む」(東京オペラシティ アートギャラリー)
1978年フランスに生まれ、映像、彫刻、ドローイング、インスタレーションなど多岐にわたる手法で、「知」についての考察を重ねてきたカミーユ・アンロ。本展は彼女のこれまでと現在を、初めて総合的に展示する機会となる。
これまでアンロは文学、哲学、美術史、天文学、人類学、博物学、デジタル化された現代の情報学など多様な分野の探究を端緒に「真の知識・教養」とは何かについて考えさせる作品を制作してきた。第55回ヴェネチア・ビエンナーレでは銀獅子賞を受賞し、2017年にはパリのパレ・ド・トーキョー全館を使った個展開催の権利を与えられた史上3人目の作家となるなど、現代美術家としていま注目を集めている。本展では、草月流の全面協力のもと会場で制作されたいけばなの作品を展示するなど、日本ならではの試みも行う予定だ。
会期:2019年10月16日~12月15日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー 3Fギャラリー1、2
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:03-5777-8600
開館時間:11:00〜19:00(金土〜20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火曜日)
料金:一般 1200円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料
ヨーロッパ最強一族のコレクションがここに。「ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史」(国立西洋美術館)
13世紀末にオーストリア進出後、数世紀に渡って広大な領土と多様な民族を統治したハプスブルク家。日本でもミュージカル「エリザベート」などで知られるヨーロッパ名門家のコレクションが、今年の秋、国立西洋美術館にやってくる。
日本とオーストリア国交樹立150周年を記念した本展では、ハプスブルク家のコレクションを受け継ぐウィーン美術史美術館の協力のもと、絵画や工芸品、武具などからなるコレクションを展示。同家の個性豊かな人物にも着目し、その蒐集の個性や時代ごとの傾向を探っていく。また人気イラストレーター長場雄とのコラボレーショングッズなど、関連企画も要注目だ。
会期:2019年10月19日〜2020年1月26日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:03-5777-8600
開館時間:9:30~17:30(金土〜20:00、11月30日〜17:30) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、11月4日、1月13日は開館)、11月5日、12月28日~1月1日、1月14日
料金:一般 1700円 / 大学生 1100円 / 高校生 700円 / 中学生以下無料
2020年に設立25周年。「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」(東京都現代美術館)
デザイナーの皆川明が設立したブランド「ミナ ペルホネン」が来年25周年を迎える。「せめて100年つづけたい」との思いから始めたブランドが、その4分の1を迎えようとしている今、東京都現代美術館にてその世界観を紹介する展覧会が開催される。
タイトルの「つづく」は、時間の継続性を意味するだけでなく、つながる・重ねる・循環するなど、ものごとが連鎖し何かを生みだしていく様を予感させる。本展では、多義的な「つづく」をキーワードに、ミナ ペルホネンの独自の理念や世界観を紹介するとともに、現代におけるものづくりの意味や、デザインの社会における役割を考察する。
会期:2019年11月16日〜2020年2月16日
会場:東京都現代美術館 企画展示室3F
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、1月13日は開館)、12月28日〜2020年1月1日、1月14日
最新技術とアートから見る近未来の人間像。「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命-人は明日どう生きるのか」(森美術館)
最新の科学技術とその影響を受けて生まれたアート、デザイン、建築を通して、近未来の人間像について考える展覧会がこの秋、森美術館で行われる。
人工知能、AR、バイオ技術などますます科学技術が身近になった昨今。今後さらに人間や人間を取り巻く環境への影響が大きくなると予想されるなかで、20〜30年後の未来を思い描き、豊かさとは何か、人間とは何か、生命とは何かという根源的な問いについて考察する。長谷川愛、ビャルケ・インゲルスなど気鋭のアーティストたちの作品を前に、思いを巡らせてみたい。
会期:2019年11月19日~2020年3月29日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00〜22:00(火〜17:00)
休館日:会期中無休
料金:一般 1800円 / 大学・高校生 1200円 / 4歳〜中学生 600円 / 65歳以上 1500円