現代作品にフォーカスした世界初の展覧会。国立新美術館でカルティエの大規模展「カルティエ、時の結晶」が10月開催
東京・六本木の国立新美術館で、ジュエリーブランド・カルティエの大規模展覧会「カルティエ、時の結晶」が2019年10月2日〜12月16日にわたって開催される。6月5日、同美術館にて行われた記者発表会にて展覧会内容や会場構成が発表された。
1847年にパリで創業された、世界を代表するジュエリーブランド「カルティエ」。これまでに世界の著名な美術館など33ヶ所で開催された様々な「カルティエ展」とは異なる、世界初の展覧会が国立新美術館で行われる。その開催に先立ち、6月5日、同美術館にて記者発表会が行われた。
本展が「世界初」を謳うのは、会場に集まる作品が1970年代以降の現代作品だという点にある。展示総数約300点の約半数にあたる作品が、個人所蔵のもの。ふだんは目に触れることのない世界の個人所蔵作品を見ることのできる貴重な機会となる。
「時を超えた作品相互の関係に注目してほしい」と語るのは、本展監修者であり、国立新美術館主任研究員の本橋弥生だ。従来は歴史順、あるストーリーに沿って構成されることの多かった「カルティエ展」だが、本展では、デザインや色なども考慮し、ある場面では対比的に、またある場面では時系列的に配置しながら、作品同士の関係性をひもといていく。
また、新素材研究所(杉本博司+榊田倫之)による会場構成にも注目してほしい。ふたりが美術展の会場構成を本格的に手がけるのは今回が初。彼らがこだわる無垢素材の木や石、ガラス、川島織物セルコンと特別に共同開発したファブリックを用いて、他に類を見ない空間が生み出される。
本展に際して、杉本は次のように語る。「宝石とは人間だけが興味を示すもの。そして美意識の発見とは、人間を成立させる心の神秘だと思います。今回の会場構成は、作家として世界で展示するなかで蓄積してきたノウハウを使ってみようと思っています。私はこれまで、フランク・ゲーリー、ダニエル・リベスキンドといった、強い個性を持つ建築家が手がけた空間で展示を行ってきました。しかし国立新美術館の展示会場は可動壁ゆえに何をやってもいいという、いわばまったく個性のない空間。ゼロからスタートするというのは初の経験と言えます」。
そして榊田からは、具体的な展示イメージが説明された。会場は「光」をイメージし、「時の間」という象徴的な空間を取り囲むように様々な空間が配置され、最終章では彗星の楕円軌道を思わせる長さ16mにおよぶ展示ケースが登場することも明かされた。「イメージは光。現在進行形で作業を進めています」と榊田は話す。
カルティエの永続性と進化というふたつの「時間」を堪能できる本展を楽しみに待ちたい。