カメラ・交換レンズ関連の光学機器メーカ「Sigma」が写真家・植田正治を訪ねるフォトウォークを昨年12月に開催。Sigmaが掲げる「The Art of engineering. Engineering for Art」を反映したこのフォトウォークをレポートするとともに、企業としてなぜアートを重視するのかに迫る。
2024年11月、その植田の故郷である鳥取の米子駅に、10人のアマチュアカメラマンが集まった。彼らが手にするのは、Sigmaの世界最小・最軽量のフルサイズミラーレスカメラ、fpシリーズ。年齢もカメラキャリアもまちまちな彼らが参加するのは、2日間にわたり植田正治の足跡をたどりながら自身の撮影を楽しむ「撮る・見る・学ぶ fpフォトウォーク in 鳥取」だ。Sigmaが自社製品のユーザー向けに企画したイベントで、植田正治写真美術館や生家を訪ね、鳥取砂丘をはじめ植田が歩き撮影した地での撮影会を実施しながら、機材の魅力を存分に引き出してもらう試みとなっている。
こうした取り組みの背景には、同社の確固たる事業哲学と企業理念がある。1961年に「シグマ研究所」として創業したSigmaは、デジタルカメラ、交換レンズ、各種アクセサリーなど「撮影の道具」をつくり続け、2021年には創業60周年を迎えた。創業時から変わらぬ哲学は「Small office, Big factory」。理想の製品開発には、高い生産技術が不可欠であり、鋭い発想力をかたちにする「ものづくり」の力のバランスを端的に表した言葉だ。製品に関わるほぼすべての製造・加工・組み立てを、会津工場を中心とした国内一貫生産体制を維持し、高い製造技術と品質管理を実現している。
このように、徹底した職人気質によるテクノロジー製品を世に送り出してきたSigma。理念のひとつが「The Art of engineering. Engineering for Art」だ。技術の粋を集めた製品そのものが芸術であり、その製品は芸術表現に貢献しているというふたつの意味が込められる。シグマの事業において「アート」は重要なものとして明示されている。