18世紀後半から現代まで、時空を超えるハイジュエリーの共演。「ショーメ展」が三菱一号館美術館で開催
パリのもっとも長い歴史を誇るジュエリーブランド、ショーメの伝統的な装飾芸術を紹介する展覧会「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界—1780年パリに始まるエスプリ」展が東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催される。ショーメと日本文化との強い結びつきにも焦点を当てる。会期は2018年6月28日~9月17日。
ショーメはパリの伝統あるジュエリーブランドであり、1780年から独自のスタイルで芸術との歴史的なつながりを築き上げてきた。ナポレオン1世と皇妃ジョゼフィーヌの御用達ジュエラーとしての伝統を引き継ぎつつ、いまなお創造の革新性を追求し続けている。
そんなショーメの世界を堪能できる展覧会「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界」が、東京・丸の内の三菱一号館美術館で開催される。本展はルーヴル美術館名誉館長のアンリ・ロワレットと三菱一号館美術館の館長の高橋明也の共同監修のもと、約240年におよぶショーメの伝統と歴史、文化、スタイルを紹介する日本初の展覧会だ。18世紀から現代までのジュエリー、工芸品、絵画、デザイン画など、未公開を含む約300点の作品が展示される。ロマン主義、アール・デコ、そしてジャポニスムなどの多様な文化的影響を受け、芸術潮流との対話のなかで洗練されたジュエリー作品を鑑賞できる。
展示はそれぞれの異なるテーマで展開される。まず「ティアラの芸術」では、ジュエラーの芸術の頂点、そしてメゾンのシンボルでもあるティアラを紹介。ティアラは権力の象徴であると同時に流行のアクセサリーでもあり、時代ごとの公式・社会行事を飾り立てた。あらゆる様式の影響をうけ、古典的様式から豪華なスタイルへと変化する様子は、ショーメの創造性と卓越性をあらわしている。
「統治者の選ぶもの」では、フランスの歴史において高貴な人物とメゾンとのかかわりに焦点を当てる。皇帝が注文した作品は、権力の象徴としての意味を強調し、それ以降のメゾンのスタイルに着想を与えた。このセクションでは、ショーメの作品である「戴冠式の宝剣」を持つナポレオンの肖像画、《戴冠衣装の皇帝ナポレオン1世》が展示される。
そのほか「想いをあらわすジュエラー」では愛を象徴するメッセージやモティーフを備えた、結婚祝いなどで送られたジュエリーを紹介。そして、ショーメが創業から大切にしてきたテーマである自然主義をあつかう、「自然の歴史」へとつづく。このスタイルのジュエリーは力強さと繊細さ、構成と動きといった要素を組み合わせており、動植物と昆虫をモチーフとした作品からは、ジュエラーの大胆な発想力や独創的な技術が垣間見える。
結びのテーマ「ショーメと日本」では、ショーメが日本とその文化に特別な敬意を表し、18世紀の終わりから続く日本との強い結びつきを紹介。19世紀半ばジャポニスムが欧州の装飾芸術、とりわけアール・ヌーヴォーにあらわれた典型的な作品や、日本と西洋の文化の調和が見られる作品を展示する。ショーメの作品はジャポニスムに着想を得ており、今日まで継続しているその影響は、相互の卓越した文化の証となっている。また、本展のために特別に飾られたジュエリーセットは、自然の繊細さをたたえたものであり、日本美術とメゾンのデザイナーとの間で共有されたインスピレーションの源を想起させる。
今回の展覧会に祭してアンリ・ロワレットは、最新の展覧会を日本で行う理由について「日本は、フランスと長い時間をかけて関係を築き、いまも継続している文化大国だからです。そして三菱一号館美術館は開館当初から、私がそのプログラムの質の高さに敬意を表している場所なのです」とコメント。
また、高橋は日本文化がパリのジュエリーへ与えた影響について「西洋の近代絵画へ日本の浮世絵版画がもたらした影響に比べれば、ジュエリーはいまだ分析の途上にあるといえます。しかし技術や扱われている題材などから見れば、日本の工芸品がパリの宝飾品に対してたいへんな影響力をもっていたことは明らかです」と語っている。
パリの伝統的なジュエリーブランドとしてのショーメの貴重な作品を通覧すると同時に、洗練された美しいジュエリー作品を通じて、フランスと日本の芸術文化のつながりにも注目したい。