映画に託された夢をフィルム片から抽出する。ポーラ美術館で「平川祐樹―映画の見る夢」が開催
映像を主軸として、場所・ものに宿った時間がテーマの作品を制作する平川祐樹。新作「Nitrate Dreams」シリーズ全3作品をポーラ美術館で日本初公開する。会期は2018年9月30日~12月2日。
平川祐樹は1983年名古屋市生まれ。メディア考古学的な視点をとおして、場所・物質に宿る時間を映像作品として提示している。2013年ポーラ美術振興財団在外研修員としてベルリン・ドイツに滞在し、15年には文化庁新進芸術家海外研修員に選出。 これまで個展「映画になるまで 君よ高らかに歌へ」アンドーギャラリー(東京、2018)や、台北デジタル・アート・フェスティバル(2017)、「19th DOMANI・明日展」(国立新美術館、2016)、あいちトリエンナーレ2013、札幌国際芸術祭2014などに参加してきた。
近年は物質の燃焼や蒸留、浄化といった錬金術的手法を使い、古い映画フィルムから銀を抽出。あるいはフィルムの灰を平面へと置き換えることで、「記憶」や「記録」、「生」と「死」といった普遍的な美術のテーマを感じさせる作品を制作している。
本展で公開される「Nitrate Dreams」シリーズは、著しく傷んだ一片の映画フィルムから着想を得て制作。映像(=非物質)と結晶(=物質)を抽出するプロセスによって、いつかは劣化し、消滅する運命である映画に託された夢のありかを探るというものだ。
映像作品《Grains of Film – Silver Nitrate》では、フィルムの画像から抽出された銀粒子が、金色に輝く水中を漂い新たな画像を再構成する。また、その銀粒子が再鋳造された《Three Minutes of Silver》は、3分間というフィルムの時間尺が収められている。
平川が映し出す銀塊の世界を楽しみたい。