絵具の層を熱で引っ掻いて。画家・風能奈々が個展「触っても触っても遠い」で見せる新境地
画家・風能奈々の個展「触っても触っても遠い」が、東京・六本木の小山登美夫ギャラリーで開催される。本展では、絵具の層を熱ペンで溶かしながら引っ掻いた新作絵画などを見ることができる。会期は7月27日〜8月24日。
風能奈々(ふうの・なな)は1983年静岡県生まれの画家。2006年に大阪芸術大学芸術学部美術学科油画コースを卒業後、08年に京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画を修了した。現在も京都を制作に拠点に活動を行っている。
家族と遊んだ思い出や読んだ物語、そして日常に起こる事柄やネガティブな感情も含めた内的世界を、高い密度かつ多様なマチエールで表現する風能。その画面に現れる、まるで磁器や彫金を思わせる光沢と、刺繍や織物のような繊細な筆致は、すべてアクリル絵具のみで生み出されるものだという。
風能はこれまで、東京や栃木、シンガポールで個展を開催してきたほか、「VOCA展」(2009、上野の森美術館)、「絵画の在りか」(2014、東京オペラシティ アートギャラリー)といった話題のグループ展にも参加。その作品は、アマン東京やジャピゴッツィコレクション(スイス/アメリカ)、高松市美術館、モンブラン GBU ジャパンなどに収蔵されている。
今回、風能の個展「触っても触っても遠い」が、東京・六本木の小山登美夫ギャラリーで開催される。本展は、風能にとって同ギャラリーでは8度目の個展だ。
本展では、モチーフを上塗りして重ね、絵具の層を熱ペンで溶かしながら引っ掻くことで、画面に新たな描線を登場させた新作を見ることができる。加えて、「鍵」などをモチーフとした抽象的な表現の作品も展示。風能の新たなアプローチは、人間誰しもが持っている意識下に沈んだ記憶を呼び起こすかもしれない。