未来に向けて警鐘を鳴らす作品、その伝達の速度。小沢剛の個展「Jアラート」がMISA SHIN GALLERYで開催
世界情勢や美術史に着目し、批評的な視点とユーモアを備えた作品を制作してきた小沢剛。その個展「小沢剛:Jアラート」が、東京・南麻布のMISA SHIN GALLERYで開催される。会期は11月8日〜12月21日。
小沢剛は1965年生まれ。牛乳箱を用いて路上で作品を展示する超小型移動式ギャラリー「なすび画廊」や、野菜でつくられた武器を持つ女性のポートレイトのシリーズ「ベジタブル・ウェポン」をはじめ、美術史や社会の状況に着目し、批評的な視点とユーモアを備えた作品を手がけてきた。
そんな小沢の個展「Jアラート」が、東京・南麻布のMISA SHIN GALLERYで開催される。会期は11月8日~12月21日。本展で小沢は「す下降にンバンレパ兵神神兵パレンバンに降下す」「ポスターの写真」シリーズを発表する。
「す下降にンバンレパ兵神神兵パレンバンに降下す」のモチーフとなっているは、鶴田吾郎による戦争画《神兵パレンバンに降下す》(1942)だ。小沢は、日本軍の勇姿を描いたほとんどの戦争画において、銃口の先に敵が描かれていないことに注目。同作を鏡面で模写することにより、銃口がそれを構える兵士自身に向いているように見える絵画を制作した。自身の手を使って戦争画という近代美術以降の最大の闇を探る本シリーズは、小沢のライフワークのひとつとなっている。
また「ポスターの写真」は、高松次郎唯一の写真シリーズ「写真の写真」に強く心を惹かれていたという小沢がその手法をなぞろうとするもの。小沢は、原発を啓蒙するポスターコンクールのために子供たちが描いたポスターに折り目やしわをつけて小学校の様々な場所に配置し、写真家・椎木静寧に撮影を依頼。美術教育の負の側面をあぶり出し、それをかたちに留めることを試みた。
「美術の伝達のスピードというのは、ゆっくりと広がっていくものである。ときには作品が作者の死後も存在をし続けることによって、幾世代にもわたって、人類に警鐘を鳴らし続けることもある」と語る小沢。本展では、ゆっくりと思考のレイヤーを重ねて作品の意味を広げることで、静かに未来に向けて「警告」する表現の現在形を見ることができるだろう。