2020.3.15

桂ゆきから草間彌生、白髪一雄まで。奈良県立美術館の特別展「熱い絵画」に大橋コレクションの戦後日本絵画が集結

関西の企業家・化学者である大橋嘉一が収集した、1950〜60年代の絵画、版画、彫刻約2000点からなる「大橋コレクション」。そこから選りすぐりの戦後日本絵画90点を紹介する特別展「熱い絵画」が、奈良県立美術館で開催される。会期は4月18日〜7月5日。

白髪一雄 貞宗 1961 京都工芸繊維大学美術工芸資料館蔵
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 「大橋コレクション」は、関西の企業家・化学者である大橋嘉一が1950年代後半から70年代初頭にかけて日本の現代美術を積極的に収集し、形成したプライベートコレクションの先駆け。絵画、版画、彫刻など約2000点からなり、氏の没後は奈良県立美術館、国立国際美術館、京都工芸繊維大学美術工芸資料館に分割して寄贈された。

 そのなかから戦後日本絵画の秀作90点を紹介する特別展「熱い絵画 大橋コレクションに見る戦後日本美術の力」が、奈良県立美術館で開催される。会期は4月18日~7月5日。

津高和一 対話 1958 奈良県立美術館蔵

 第二次世界大戦後の荒廃と混乱のなかから再出発した日本美術は、とくに1950年代以降、古い価値観から脱却して新しい表現を求める模索や実験が続き、大きく揺れ動いた。個人コレクターの審美眼によって形成された大橋コレクションは、戦後の日本美術を体系的に網羅する内容ではないものの、そこからは1950~60年代の「熱さ」を感じ取ることができる。

 本展では5つの展示室に緩やかなテーマを設け、コレクションの内容を展観。展示室1では戦前・戦中から創作活動を行い、戦後に新たな表現を模索した小野忠弘、桂ゆき、鶴岡政男、難波田龍起らを、2では戦後に本格的な創作活動を始め、美術・芸術の概念そのものに疑問符を呈した磯辺行久、菊畑茂久馬、津高和一らを紹介する。

桂ゆき 大きな木 1946 奈良県立美術館蔵

 また3では、欧米の前衛美術の動きに身を投じた作家を取り上げ、とくに工藤哲巳、草間彌生の渡航以前の貴重な初期作品を展示。4では、日本画に変革をもたらそうとした岩崎巴人、下村良之介らを紹介する。そして5では、「具体美術協会」初期メンバーのうち白髪一雄と元永定正に注目。なお同館の大橋コレクション約500点のなかでも、白髪作品は約120点と突出して多く収蔵されている。

 加えて関連のコレクション展示「奈良の現代作家」では、大橋が東京藝術大学に設置した「大橋賞(現・O氏記念賞奨学金)」受賞者のうち奈良県出身の絹谷幸二や金森良泰、そして「具体」を代表する田中敦子の作品も見ることができる。

※本展は、令和2年度予算成立をもって開催となる。

岩崎巴人 飛び越える馬 1960 奈良県立美術館蔵