暗闇でリズミカルに光る広告板。中国の新世代作家を代表するチェン・ウェイの個展が開催中
近年アジアやヨーロッパ、アメリカ各地で個展を開催し、注目を集めてきたチェン・ウェイ。現在、東京・六本木のオオタファインアーツでは、日本では3年ぶりとなるチェンの個展「Night Falls」を開催している。会期は3月28日まで。
1980年中国浙江省に生まれ、現在は北京を拠点に活動を行うチェン・ウェイは、中国で80年代生まれを意味する「80後」世代を代表する作家のひとりとして活躍を続ける。その作品は、写真をおもな表現媒体としながらも映画のワンシーンのように詩的な雰囲気を湛え、いっぽうで急変を遂げる中国社会に対する深い洞察が反映される。近年はアジア各地やヨーロッパ、アメリカで数多くの個展を開催するなど、着実に作家としてのキャリアを築いてきた。
現在、東京・六本木のオオタファインアーツでは、日本では3年ぶりとなるチェンの個展「Night Falls」を開催中(~3月28日)。本展では、LED作品10点を使ったインスタレーションを見ることができる。北京の街角で見られる使い古されたLED広告板から着想を得て始まったという本シリーズは、街中のLED板に流れる求人広告や魅惑的な商品名が、人々の夢や欲望の集積であり都市の無意識の表象であることを示唆する。
そのLED群が空間全体に配置され、変化を続ける中国の都市風景を連想させる本展。LED板に映し出される「Where are you going tonight?」という問いかけは、急激な発展の裏にある人々の不安や孤独を暗喩するかのようだ。スタジオ内にセットを設営し、虚構の風景を写真に収める手法で制作を行ってきたチェンにとって、立体作品を使ったインスタレーションは、これまでの写真表現の延長上にある。静寂のなかでビル群のようにそびえるインスタレーション作品が発する光は、様々な角度から作品を楽しむことを鑑賞者に促す。