2022.10.17

幻想の画家、夫婦の共鳴と差異。特別展「藤野一友と岡上淑子」が福岡市美術館で開催へ

ともにシュルレアリスムから影響を受けた画家・藤野一友と美術家・岡上淑子。ふたりの活動をふたつの個展形式で紹介する特別展「藤野一友と岡上淑子」が福岡市美術館で開催する。会期は11月1日〜2023年1月9日。

左=藤野一友 抽象的な籠 1964 福岡市美術館蔵、右=岡上淑子 戦士 1952 栃木県立美術館蔵
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 シュルレアリスムから影響を受けた画家・藤野一友と美術家・岡上淑子。ふたりの活動をふたつの個展形式で紹介する特別展「藤野一友と岡上淑子」が福岡市美術館で開催する。会期は11月1日〜2023年1月9日。

 藤野一友(1928〜80)は1950年代より二科会を中心に活動した、細密な描写による幻想絵画で知られている画家。神話や西洋古典絵画、シュルレアリスムから影響を受けた作品群は絵画のみならず、舞台美術や詩や小説の執筆、装丁、挿絵など、ジャンルを横断し幅広く活躍した。同年生まれの岡上淑子(1928〜)は、進駐軍が残した洋雑誌の写真を用いた、コラージュ作品で知られている美術家。紡ぎ出された夢のような世界観の作品は、1950年から56年の発表直後からたちまち注目されされるも、その後美術界から忽然と姿を消した。近年、高知県立美術館と東京都庭園美術館で回顧展が行われ、話題を集めた。

 このふたりは1951年に文化学院で出会い、57年に結婚。その表現方法や女性の身体がモチーフといった点で共通部分を見出すことができる。

藤野一友 カテドラル 1961 個人蔵
藤野一友 抽象的な籠 1964 福岡市美術館蔵

 いっぽうで、近しいモチーフを表現しているものの、藤野作品には戦後日本社会における家父長的な男性優位のまなざしが見られ、岡上作品からは戦後日本で女性が抱いていた夢と苦悩を読み取ることもできる。同時期に活動し、一番近いところにいたとも言えるふたりの活動をそれぞれ追いかけることで、共通点や差異も浮き彫りとなる。

岡上淑子 人形師 1951 東京国立近代美術館蔵
岡上淑子 戦士 1952 栃木県立美術館蔵

 なお、本展に関連したイベントも2つ実施される。記念講演会「岡上淑子とその時代」では、巖谷國士(仏文学者、美術評論家、明治学院大学名誉教授)が講師として登壇。岡上淑子のコラージュ作品について、また藤野と岡上の活動していた日本の戦後という時代について、新たな視点から紹介する。また、つきなみ講座「藤野一友と岡上淑子」では、担当学芸員が本展の開催意図やふたりの作品の魅力についてあらためて紹介する。これらのイベントもあわせてチェックしたい。