2024.11.15

今週末に見たい展覧会ベスト9。両足院のボスコ・ソディと加藤泉から束芋による個展、東京都美術館の「ノスタルジア―記憶のなかの景色」まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「黙: Speaking in Silence」展示風景より
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もうすぐ閉幕

「黙: Speaking in Silence」(両足院)

 京都の名刹・両足院にて、メキシコと日本のふたりのアーティスト、ボスコ・ソディと加藤泉による展示「黙: Speaking in Silence ‒ Bosco Sodi & Izumi Kato」が11月17日まで開催されている。会場レポートはこちら

 本展はソディと加藤が20年近くにわたって築いてきた友情と芸術的交流のなかから生まれ、アーティスト自身で構想・企画された初の展覧会。京都にある建仁寺の塔頭寺院である両足院を特別拝観とし、禅寺の静寂に包まれた空間でふたりのアート作品が対話する特別な展示となっている。

会期:2024年11⽉2⽇〜17⽇
会場:両足院
住所:京都府京都市東⼭区⼤和⼤路通四条下る4丁⽬⼩松町591
開館時間:13:00〜17:00 ※入場は16:30まで 
休館日:無休
料金:特別拝観料 (⼤⼈1000円 / ⾼校⽣以下 500円 ※現⾦のみ)が必要

「束芋 そのあと」(ギャラリー小柳

束芋 山のあなた 2024 映像インスタレーション Photo:watsonstudio 

 東京・銀座のギャラリー小柳で、束芋による個展「束芋 そのあと」が11月16日まで開催中だ。

 近年精力的に舞台制作に携わってきた束芋は、今年ギャラリー小柳で開催したグループ展「ONE SINGLE BOOK」での出品作や、寺田倉庫で発表した回遊型の映像インスタレーション「触れてなどいない」を通じて、アニメーション制作で初めて感じた歓びを再体験したという。

  本展では、これまでの25年間の作家活動を振り返りながら束芋が自身のアニメーション制作の原点に立ち返るとともに、新たな試みとして遊びや偶然性を残し、鑑賞者が様々な思いを感じとれる空間をつくりあげている。

会期:2024年10月5日〜11月16日
会場:ギャラリー小柳
住所:東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F
電話番号:03-3561-1896 
開館時間:12:00〜19:00 
休館日:日月祝
料金:無料

「生誕100年記念 人間国宝 志村ふくみ展 色と言葉のつむぎおり」(滋賀県立美術館

志村ふくみ 梔子熨斗目 1970年 滋賀県立美術館蔵

 滋賀県立美術館で開催中の「生誕100年記念 人間国宝 志村ふくみ展 色と言葉のつむぎおり」。その後期会期が11月17日で閉幕する。

 志村ふくみは滋賀県近江八幡市生まれ。30代の頃に実母の影響で染織家を志し、植物染料による染めと紬糸を用いた紬織に出会う。特定の師にはつかず、生命力あふれる色の表現、文学や哲学といった多彩な芸術分野への探究心に培われた独自の作風が評価され、1990年に紬織の人間国宝に認定された。

 本展では、志村ふくみ作品や作家ゆかりの資料など80件以上を展示し、初期から近年までの歩みをたどるほか、滋賀をテーマとした作品を展示。また、随筆家としての活動にも注目し、染織作品や故郷、仕事への思いを語る様々な言葉もあわせて紹介している。

会期:2024年10月8日〜11月17日
会場:滋賀県立美術館
住所:滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1
開館時間:9:30〜17:00 ※最終入場時間は16:30
休館日:月 
料金:一般 1200円 / 高校生・大学生 800円 / 小学生・中学生 600円 / 未就学児 無料

「野良になる」(十和田市現代美術館

「野良になる」メインビジュアル

 青森県の十和田市現代美術館で「野良になる」が11月17日まで開催されている。

 本展では、近代が生み出した自律した主体としての「人間」を見直し、そこから排除された存在や思考に目を向けている。様々な二項対立的な枠組みの境界を撹乱しつつ強かに「野生でも飼われるのでもなく野良のように」息づくあり方や物語に出会う機会を創出することを試みている。

 会場では、日本とアメリカにルーツを持ち、トランスジェンダー女性として生きるあり方を彫刻で表現する丹羽海子、学校教育を離れ、独学でドローイングを柔らかいウールへと変換し風景を描く䑓原蓉子、品種改良や養殖といった人間のコントロールと動植物の生の関係を取り上げ、映像や料理の作品をつくる永田康祐、ブラジルに植民地時代以前から伝わる知識をもとに、植物と人間の関係を問い直す作品を制作するアナイス・カレニンなど、多様な視点から自然をとらえる若手アーティストの表現を紹介している。

会期:2024年4月13日〜11月17日
会場:十和田市現代美術館
住所:青森県十和田市西二番町10-9
電話番号:0176-20-1127
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は16:30まで 
休館日:月 
料金:一般 1800円(常設展含む)/ 高校生以下 無料

「日本国憲法展2024」(青山|目黒)

メインヴィジュアル

 無人島プロダクション、MISA SHIN GALLERYで開催されてきた「日本国憲法展2024」。現在、青山|目黒 で開催中の同展は11月17日までの会期となっている。

 昨年に続き2度目の開催となる「日本国憲法展」は、広島市現代美術館学芸員の角奈緒子を展示ディレクターに迎え、憲法と美術に焦点を当てるものとなっている。本展は2019年に刊行された『日本国憲法』(TAC出版)から着想を得たもので、書籍の掲載作とは異なる新たな作品を選出し日本国憲法の条文と組みあわせて展示することで、憲法を新たな角度から見つめ直すことを試みている。

会期:2024年10月26日〜11月17日
会場:青山|目黒
住所:東京都目黒区上目黒2-30-6 保井ビル1階
開館時間:12:00〜19:00(土日祝〜18:00) 
休館日:なし
料金:無料

今週開幕

上野アーティストプロジェクト 2024「ノスタルジア―記憶のなかの景色」、コレクション展「懐かしさの系譜─大正から現代まで」(東京都美術館

阿部達也 多摩川 (東京都昭島市) 2021 キャンバスに油彩 作家蔵

 東京・上野の東京都美術館で、上野アーティストプロジェクト2024「ノスタルジア―記憶のなかの景色」とコレクション展「懐かしさの系譜─大正から現代まで 東京都コレクションより」が開催される。会期はともに11月16日〜2025年1月8日。

 「ノスタルジア―記憶のなかの景色」では、日常の街の風景を描く阿部達也と南澤愛美や、子供のいる情景を描き出す芝康弘と宮いつきらを展示。また、「記憶のなかの景色」を表現している入江一子、玉虫良次、近藤オリガ、そして久野和洋の作品も紹介する。各々の表現による多様な「ノスタルジア」を展示することで、そこにまつわる複雑な感情が持っている意味と可能性を探っていくものとなる。

 さらに連動して開催するコレクション展「懐かしさの系譜─大正から現代まで 東京都コレクションより」では、東京都が所蔵するコレクションのなかから、昔日の情景をとらえた絵画などに加え、現代の都市郊外を映した写真なども紹介。大正期から現代にいたる日本の風景をたどることにより、人々がそれらの中に見出してきた「懐かしさ」とは何であるかについて、あらためて考えるものとなる。

会期:2024年11月16日〜2025年1月8日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03-3823-6921 
開館時間:9:30〜17:30(11月22日、29日は〜20:00)※入室は閉室の30分前まで
休館日:11月18日、12月2日、16日、21日〜2025年1月3日、6日
料金:[ノスタルジア―記憶のなかの景色]一般 500円 / 65歳以上 300円、[懐かしさの系譜─大正から現代まで]無料

「黒部市美術館開館30周年 サエボーグ Enchanted Animals」(黒部市美術館

「Cycle of L」公演風景(高知県立美術館、2020) 撮影:釣井泰輔

 富山県の黒部市美術館で「黒部市美術館開館30周年 サエボーグ Enchanted Animals」が開催される。会期は11月16日〜2025年1月13日。

 サエボーグは、ラテックス製のボディースーツで自身の身体を拡張させて家畜等のキャラクターに扮しパフォーマンスを行ってきた。農場や家という生活世界を舞台に彼らの役割を演じることで、生きることの関係や構造を鑑賞者に開示している。

 本展は、代表作である《Slaughterhouse(スローターハウス)》《Pigpen(ピッグペン)》《Pootopia(プートピア)》という、農場が舞台の中心となる作品で構成。そして、その舞台に本展のタイトルにもなっている「Enchanted Animals(エンチャンテッド・アニマルズ)」(魔法にかかった動物たち)が新たな世界を立ち上げるという。

会期:2024年11月16日〜2025年1月13日
会場:黒部市美術館
住所:富山県黒部市堀切1035(黒部市総合公園内) 
開館時間:9:30〜16:30 ※入館は16:00まで
休館日:月(ただし1月13日は開館)、12月29~1月3日
料金:一般 500円 / 高校・大学生 400円 / 中学生以下 無料

「平安文学、いとをかし─国宝『源氏物語関屋澪標図屏風』と王朝美のあゆみ」(静嘉堂@丸の内

 東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館で、「平安文学、いとをかし─国宝『源氏物語関屋澪標図屏風』と王朝美のあゆみ」が開催される。会期は11月16日〜2025年1月13日。

 王朝文化が花開いた平安時代には、漢詩や和歌、物語や日記など、様々なジャンルの文学作品が誕生した。平安文学は日本美術のなかでも重要なテーマとしてあり続け、時代を超えて数多くの作品に影響を与えている。

 本展では、国宝 俵屋宗達《源氏物語関屋澪標図屏風》、国宝 《倭漢朗詠抄 太田切》をはじめとする国宝3件、重要文化財5件を含む平安文学を題材とした絵画や書の名品と、静嘉堂文庫が所蔵する古典籍から鑑賞者を平安文学の世界に誘うという。

会期:2024年11月16日〜2025年1月13日 ※12月2日はトークフリーデー
会場:静嘉堂文庫美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-1−1 明治生命館1F
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで)
休館日:月(祝日の場合は翌火)、展示替期間、年末年始 
料金:一般 1500円 / 高大生 1000円 / 障害者手帳をお持ちの方(同伴者1名無料を含む)700円 / 中学生以下無料