2024.12.27

今週末に見たい展覧会ベスト5。カナレットから古陶磁、白髪一雄、金山明まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「白髪一雄 金山明:プラス・マイナス 生誕100周年記念展」の展示風景より
Photo by Ryuichi Maruo. Courtesy of Fergus McCaffrey
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もうすぐ閉幕

「カナレットとヴェネツィアの輝き」(SOMPO美術館

展示風景より、カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》(ダリッジ美術館、ロンドン)

 東京・新宿のSOMPO美術館で「カナレットとヴェネツィアの輝き」が12月28日に閉幕する。レポート記事はこちら

 本展は、ヴェネチア出身の巨匠・カナレットを本格的に取り上げる日本初の展覧会。カナレットの絵画作品を中心とした約70点の絵画や資料などで、中世から19世紀後半頃に至るヴェドゥータ(景観画)発展の系譜をたどるものとなっている。

 会場では、スコットランド国立美術館など英国コレクションを中心に、油彩、素描、版画など約60点で構成。カナレットによる緻密かつ壮麗なヴェネツィアの描写を通じ、18世紀の景観画というジャンルの成立過程をたどるとともに、その伝統を継承し、ヴェネツィアの新たなイメージを開拓していった19世紀の画家たちの作品を知ることもできる。

会期:2024年10月12日~12月28日
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
開館時間:10:00~18:00(毎週金~20:00) ※入場は閉館30分前まで
料金:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生以下無料

企画展「古陶磁にあらわれる『人間模様』展」(戸栗美術館

 東京・渋谷の戸栗美術館で、企画展「古陶磁にあらわれる『人間模様』展」が12月29日まで開催されている。

 多彩な装飾が特色である江戸時代の伊万里焼や、明時代の中国・景徳鎮窯の磁器のなかで、本展では人物のモチーフに注目する。吉祥図としてあらわされた神仙画や、歴史上の名場面を描いた歴史画、世相を反映した風俗画など、その内容は多岐にわたる。本展では、伊万里焼や景徳鎮窯磁器を中心に約70点の同館所蔵作品を、4つのテーマに分けて紹介している。

 表された人物は誰か、どのような背景から描かれたのか、そして、どのような人々が受容したのか。「人物文様」そのものだけではなく、当時の「人間関係」にも目を配りながら、古陶磁にまつわる「人間模様」を紐解く本展をお見逃しなく。

会期:2024年10月10日~12月29日
会場:戸栗美術館
住所:東京都渋谷区松濤1-11-3
電話番号:03-3465-0070
開館時間:10:00~17:00(金土〜20:00)※入館は閉館30分前まで
料金:一般 1200円 / 高大生 500円 / 中学生以下 無料(10月14日はメモリアルデーのため無料)

「白髪一雄 金山明:プラス・マイナス 生誕100周年記念展」(ファーガス・マカフリー東京

展示風景より
Photo by Ryuichi Maruo. Courtesy of Fergus McCaffrey

 具体美術協会の会員であった金山明(1924〜2006)と白髪一雄(1924〜2008)の生誕100周年を記念する展覧会「プラス・マイナス」が、表参道のファーガス・マカフリー東京で12月28日まで開催中だ。

 金山と白髪は、尼崎で生まれた幼馴染で、1940年代に芸術家を志し、芸術論を学んだのち、52年に前衛美術グループ「0会」を設立した。村上三郎田中敦子もこのグループに加わり、当時の美術界に新しい風を吹き込んだ。54年には、金山の幾何学的な抽象画と、白髪が指や足を使って描いた作品が注目を集め、白髪の提唱する「プラス・マイナス」の芸術哲学が徐々にかたちづくられていった。

 本展では、両作家が追求した革新性と独自の絵画手法に焦点を当てる。金山のロボットを用いた絵画作品や、白髪が足で描いた独創的な作品を紹介し、「これまでにないものを創れ」という具体のモットーを体感できるものとなっている。

会期:2024年10月3日〜12月28日
会場:ファーガス・マカフリー東京
住所:東京都港区北青山3-5-9
電話番号:03-6447-2660
開館時間:11:00~19:00
料金:無料

イェンス・フェンゲ「Parlour」(ペロタン東京

イェンス・フェンゲ Proof 2024
Photo by Carl Henrik Tillberg Courtesy of the artist and Perrotin

 ペロタン東京で、イェンス・フェンゲによる個展「パーラー」が12月28日に終了する。

 イェンス・フェンゲは1965年スウェーデン・ヨーテボリ生まれ。現在、スウェーデン・ ストックホルム在住。20世紀初頭のコラージュと古代芸術である影絵を交差させながら、ペインティングのなかにペインティングを組み立てていくという、超現実的でマトリョーシカのような美学を構築。また、象徴的な肖像画から、静物画、家庭のインテリア、都市景観、風景画、幾何学的な抽象画まで、あらゆるジャンルの全階層を自身の作品に取り入れるとともに、パネル上に油絵具、鉛筆、ビニール、ボール紙、布などといった多様なメディウムや素材を用いて表現してきた。その洗練された絵による"劇"に登場する、輪郭的でしばしば"切り抜き"の主人公たちは、舞台のように重なりあう表現の層に流れ込む。

 「パーラー」の語源は中世に遡り、かつて沈黙が厳守されていた修道院において、会話を交わすことが唯一許された部屋がパーラーと呼ばれた。フェンゲのパーラーは、私的あるいは家庭的なものを映し出す劇場として、人、動物、平凡な物をどこかで見たうろ覚えの情景のように継ぎ接ぎ、並べ替えて登場させ、内的世界を描き出すものである。

会期:2024年11月20日~12月28日
会場:ペロタン東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階 ペロタン東京
電話番号:03-6721-0687
開館時間11:00~19:00
料金:無料

「T.T I-A 02 遺物の声を聴く 応用考古学の庭」(草月会館)

展示風景より
撮影=新津保建秀

 デザイナー・髙橋大雅(1995〜2022)が2017年にニューヨークで立ち上げたブランド「T.T」(ティー・ティー)による展覧会が、赤坂の草月会館にあるイサム・ノグチ設計の石庭「天国」で12月29日まで行われている。

 髙橋は10代の頃から海外のアンティークディーラーや古美術商を通じて、70~100年以上前の服を収集。その数は数千点に上り、過去の衣服や文化を研究し、現代や未来に存在し得る服を創造する活動を続けてきた。髙橋は2022年4月に早逝したが、京都・祇園につくり上げた総合芸術空間「T.T」や、約2000点におよぶ服飾資料や古美術品という膨大な遺産を残した。

 本展は、24年に髙橋の遺物のアーカイヴを開示するためのプラットフォーム「T.T I-A(Institution of Archeology)」の第2弾として、髙橋がもっとも影響を受けた芸術家のひとりであるイサム・ノグチが作庭した石庭「天国」を主な展示空間とし、過去の遺物や約300点に及ぶヴィンテージの服飾資料、さらにそれらから着想を得て髙橋が制作した衣服や彫刻作品が公開されている。髙橋の掲げた「応用考古学」の理念を具体化し、過去の遺物や美意識を現代に甦らせる試みに注目してほしい。

会期:2024年12月22日〜12月29日
会場:草月会館
住所:東京都港区赤坂7丁目2-21 1F
開館時間:11:00〜19:00(29日〜15:00) ※最終入場は閉館の30分前 
料金:無料