コロナ禍はアメリカ美術館職員の給与にどう影響したのか? 美術館長協会がデータを公開
アメリカの「美術館長協会」(AAMD)が毎年、アメリカ、カナダ、メキシコの美術館を対象に行う美術館関連職種の平均給与調査の2021年版が発表された。コロナ禍が美術館職員の給与に与えた影響とは?
アメリカの「美術館長協会」(AAMD)が1991年から毎年実施している、アメリカ、カナダ、メキシコの美術館を対象に行う美術館関連職種の平均給与の調査。その2021年版が発表された。
今年の調査は3ヶ国の220館を対象に調査を行い、そのうち207館から回答を集めた。館長や学芸員、教育、発展、広報、セキュリティ部門など、50以上の職種の正社員またはパートタイム従業員の平均給与のほか、今回の調査では新型コロナウイルスが美術館のパートタイム従業員の雇用や給与の変化への影響も明らかにされている。
アメリカ国内の美術館におけるパートタイム従業員の雇用は、すべての地域において減少傾向。そのうち人口比の新型コロナウイルス感染率が高い地域では、雇用の減少も大きくなっている。
例えば、新型コロナウイルスの感染率がもっとも高い、テキサス州などを含むマウンテン・プレインズ地域では、美術館のパートタイム従業員の雇用は26パーセント減で、もっとも大きな下落率となった。いっぽう、感染率がわずか2パーセントである中部大西洋岸地域では、パートタイム従業員雇用の減少率も3パーセントにとどまっている。
新型コロナウイルスは美術館関連職種の給与にも大きな影響を与えた。すべての地域において給与の伸び率は前年比で下がっており、昨年の調査でアメリカ西部地域の美術館では平均給与が2.7パーセント増だったが、今年はわずか0.6パーセントの上昇となった。
今回の調査対象となった52職種のうち、約80パーセントの職種の平均給与は前年比で増加しており、11職種は給与の減少を報告している。
美術館長(32万600ドル)や最高執行責任者(18万3700ドル)、副館長(17万7200ドル)などの管理職の平均年収は依然として高い数値を示しているいっぽう、教育部門長(8万8500ドル)やスペシャルイベントマネージャー(6万5000ドル)、案内係(3万1600ドル)など、来場者数の減少に大きく影響される職種の平均年収は前年比で減少する結果となった。
なお今回の調査は、美術館の会計年度に基づいたデータによるものであり、207館の約60パーセントの会計年度は7月1日以降に始まるため、昨年のコロナ禍の影響を完全に反映したとは言えない。また、スタッフの解雇や一時帰休なども考慮されていないため、実際の状況はまた変わる可能性がある。調査の全文は、AAMDのウェブサイトから閲覧可能。