アメリカ美術館長の平均年収は約3330万円。美術館長協会が美術館職員の給与データを公開
アメリカの「美術館長協会」(AAMD)が、アメリカ、カナダ、メキシコの美術館の50以上の職業を対象にした2019年度の「2020年給与調査」を発表した。
アメリカの「美術館長協会」(AAMD)が、アメリカ、カナダ、メキシコの美術館を対象に、2019年度の美術館関連職種の平均給与を調査した「2020年給与調査」を発表した。
1918年にスタートし、91年から毎年データを収集している同調査。今年は3ヶ国の220館に調査を行い、そのうち187館から回答を集めている。報告書には、館長や学芸員、教育、発展、広報、セキュリティ部門など、管理層から事務職まで美術館内の50以上の異なる職業が含まれている。
給与がもっとも高いのは美術館の館長だ。187館館長の平均年収は31万7500ドル(約3330万円)で、そのうち運営予算が2000万ドル以上の44館では、館長の平均年収は53万2000ドル(約5580万円)というかなり高い数字となる。館長の高給与に対し、美術館の警備員や案内係などの平均年収は、それぞれ3万5700ドル(約374万円)と3万2600ドル(約342万円)であり、その間には約10倍の差がある。
美術館長に次ぎ、副館長と最高執行責任者の平均年収はともに18万4200ドル(約1932万円)。4位の主任学芸員は、15万200ドル(約1575万円)となった。そのほかの高給職には、開発部門長(14万6600ドル)、財務部門長(13万9100ドル)、渉外部門長(13万3900ドル)、情報システム部門長/最高情報責任者(12万3800ドル)、保存管理部門長(12万3800ドル)、人事部長(11万2500ドル)などが挙げられる。
地域別に見ると、ニューヨーク州やニュージャージー州、ペンシルベニア州、ワシントンD.C.などが含まれる中部大西洋岸地域では、館長(38万6100ドル)、最高執行責任者(29万2500ドル)、副館長(20万6100ドル)、主任学芸員(18万9900ドル)、財務部門長(17万4500ドル)などの職種の平均年収はもっとも高い数値を示している。
いっぽう、カリフォルニア州やアリゾナ州、オレゴン州、ワシントン州などの州が所在する西部地域では、情報システム部門長/最高情報責任者(13万6500ドル)、上級学芸員(12万8600ドル)、マーケティング部門長(11万1200ドル)、警備員(4万2000ドル)、案内係(3万7400ドル)などの職種はより高い平均年収だ。
今回の調査では各職種の昇給率の差も見られる。例えば、同調査における設備管理、人事、教育、IT部門の昇給率は、全国の中央値を上回ったいっぽうで、財務、セキュリティ、資金調達部門は全国の中央値より低い昇給率となっている。
また、中部大西洋岸地域では、同調査による昇給率の中央値がもっとも高く、地域全職種の中央値の4倍以上の伸びを示した。いっぽう、西部地域では、昇給率の中央値が-1.6パーセントであり、地域全職種の中央値をはるかに下回っている。
昨年、フィラデルフィア美術館のキュレーターがインターネット上で、美術館で働く人たちが給与情報を自己申告するGoogleスプレッドシートを公開。美術業界における給与の透明性や給与格差をめぐり、アート界で大きな話題を呼んだ。
今回の調査では、性別や人種などの項目がまだ欠けているいっぽうで、アート界における給与格差が依然として激しいということも明らかにされている。