フェルメール《窓辺で手紙を読む女》が修復完了。2022年に東京上陸し、所蔵館外で世界初公開へ
2022年に来日予定のフェルメール《窓辺で手紙を読む女》の修復が完了した。作品の背景に弓矢を持ったキューピッドの立像が現れ、その意味が大きく変わった。
2022年1月に東京都美術館で開催される「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」に展示予定のフェルメール初期の傑作《窓辺で手紙を読む女》。8月24日、ドレスデン国立古典絵画館は本作の修復が完了したことを発表した。
窓から光が差し込み、室内で手紙を読む女性の姿が描かれた本作。1979年のⅩ線調査で壁面にキューピッドの描かれた画中画が塗り潰されていることが判明された。
長年、その絵はフェルメール自身が消したと考えられてきたが、2017年の調査によってフェルメール以外の人物により消されたことが新たにわかり、翌年から画中画の上塗り層を取り除く修復が開始。2019年5月には、キューピッドの画中画が部分的に現れた修復途中の作品が記者発表にて公開された。
修復完了後、本作の背景には弓矢を持ったキューピッドの立像が現れた。目の前の地面にふたつの仮面が転がっており、キューピッドはそのひとつを踏みつけている。構図のなかに愛の神がいることは本作の意味を大きく変え、偽装や偽善を乗り越える誠実な愛の証しとしてとらえることもできるようになった。
同館19世紀以前のオールドマスター絵画・彫刻コレクションのディレクターを務めるステファン・コジャは、「フェルメールはこの絵のなかで、人間の存在についての根本的な疑問を投げかけている」としつつ、「背景のキューピッドの修復によって、デルフトの画家の実際の意図がわかる。この絵は、表向きの愛の文脈を超え、真実の愛の本質についての根本的な主張をしているのだ」と述べている。
なお同作は、今秋ドレスデン国立古典絵画館の「Johannes Vermeer. Vom Pausing」展(2021年9月10日~2022年1月2日)で展示予定。来年の東京都美術館での展示は、所蔵館以外での世界初公開となる。