映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』が6月公開。ヴィム・ヴェンダース監督が3Dで撮るアンゼルム・キーファー
ヴィム・ヴェンダース監督作品『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』が、6月21日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開される。
2025年3月下旬から、世界遺産・二条城での大規模個展が予定されているアンゼルム・キーファー。そのドキュメンタリー映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』(配給:アンプラグド)が、6月21日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国順次公開される。
本作は、戦後ドイツを代表する芸術家であり、ドイツの暗黒の歴史を主題とした作品群で知られるキーファーの生涯と、その現在を追ったドキュメンタリー。監督は、『PERFECT DAYS』(2023)で第76回カンヌ国際映画祭 主演俳優賞(役所広司)を受賞し、第96回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたことも記憶に新しい、ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースだ。
キーファーは、ナチスや戦争、神話などのテーマを、絵画、彫刻、建築など多彩な表現で壮大な世界を創造する、戦後ドイツを代表する芸術家。1991年に高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門を受賞。ヴェンダースと同じ1945年生まれであり、初期には戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ナチス式の敬礼を揶揄する作品を制作するなど、“タブー”に挑戦する作家として美術界の反発を生みながらも注目を浴びる存在となった。71年からはフランスに拠点を移し、わらや生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作している。その作品で一貫しているのは、戦後ドイツ、そして死に向き合ってきたことであり、“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けている。
本作の制作期間は2年。3D&6Kで撮影されており、従来の3D映画のような飛び出すような仕掛けではなく、絵画や建築を、立体的で目の前に存在するかのような奥行きのある映像を再現し、ドキュメンタリー作品において新しい可能性を追求したという。ヴェンダースは「先入観を捨てて、この衝撃的なビジュアルをただ楽しんでもらいたい」とのコメントを寄せている。
キャストには、アンゼルム・キーファー本人のほか、自身の青年期を息子のダニエル・キーファーが演じ、幼少期をヴェンダース監督の息子、アントン・ヴェンダースが務めている。
日本版ポスタービジュアルは、作品のひとつである巨大な塔の中に佇むアンゼルム・キーファーの後ろ姿を映し出したもの。中央のキャッチコピー「圧倒的な没入感」とある通り、目の前に巨大で立体的な芸術品が迫りくるような迫力ある3D映像を、ぜひ劇場で確かめてほしい。