規模拡大で注目のアートフェア「ウェストバンド・アート&デザイン」が上海で開幕。気になる見どころは? (前編)
中国本土最大級のアートフェアとして、年々存在感を増すアートフェア「ウェストバンド・アート&デザイン」。その5回目が11月7日に開幕した。43の国と地域から115のギャラリーが参加した今回の見どころを、前後編でお届けする。
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中国経済の中心地である上海は近年、中国本土におけるアートの中心地にもなりつつある。その発展の拠点となっているのが、西岸芸術中心(ウェストバンド・アートセンター)だ。この地区には、龍美術館やユズ美術館など、巨大なプライベートミュージアムが並ぶほか、オオタファインアーツやShanghARTなど、大規模なギャラリーも軒を連ねている。
このウェストバンドを会場に、毎年開催されているアートフェア「ウェストバンド・アート&デザイン」が今年、5周年の節目を迎えた。
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特筆すべきはなんと言ってもその会場規模。これまでのフェアは、ウエストバンド・アートセンターのホールAのみで開催されていたが、今年9月には約1万平米にもおよぶ新会場ホールNがオープン。総展示面積が2万平米以上という巨大なアートフェアへと進化を遂げた。
会場のウエストバンド・アートセンターに到着したら、まずはそのエントランス周辺を見てほしい。広場に立つのは、徹底的に人物を簡略化して描き出すアーティスト、ジュリアン・オピーの立体作品《Bobby. & Natalie.》だ。
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そして目線を上に移すと、そこにはテキストを用いた作品で知られるローレンス・ウィナーによる《AT A DISTANCE TO THE FOREGROUND》がフェアのキャッチコピーのように存在感を放っている。
チェックインを済ませたら、ホールAに入ってみよう。
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ホールAで最初に目に入ってくるのは、日本のオオタファインアーツのブース。3つの草間彌生作品をはじめ、2014年に『Randian』誌の「Best Young Video Artist」にも選ばれた中国出身の若手作家、チェン・ランなど幅広い作家をラインナップしている。
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そしてその先には、ニューヨークを拠点に世界に支店を展開しているメガギャラリー、デイヴィッド・ツヴィルナーのブースがある。ホールAでも一際注目を集めていたこのブースでは、1960年代のミニマリズムの主要作家で、光そのものを用いた作品で知られるダン・フレイヴィンを個展形式で紹介。
緑と黄色、2色の蛍光管からなる作品《untitled (to Sonja)》は、フレイヴィンの最初の妻であったソーニャに捧げられたもの。フレイヴィンの作品としては珍しい、2つのパートで構成された作品をミニマルな空間で体験できる。
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このほか、同じくメガギャラリーとして知られるガゴシアンでは村上隆やダミアン・ハーストなどスターアーティストの安定感あるラインナップを見せるほか、パリのカメル・ムヌールは別府での個展「アニッシュ・カプーア in BEPPU」でも注目を集めているアニッシュ・カプーアの個展を開催。東京でもギャラリーを展開するペロタンは、アメリカ人アーティストで写真と彫刻の領域を超えた作品を発表しているレスリー・ヒューイットを個展形式で見せている。
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1ブースあたりの面積も広く、ダイナミックな作品や展示が多く見られたホールA。続く後編では、ホールNの概要と本フェアの見どころでもあるパブリック・アートのプログラム「Xiàn Chǎng(現場)」、そして周辺のギャラリー情報を紹介する。