美術家・山口和也による世界初リサイタル。ザ・シンフォニーホールで生み出される絵画
美術家がクラシック音楽の殿堂であるザ・シンフォニーホールの舞台へ立ち、絵を描く音をホールに響かせ、その音がやがて絵画となる──そんな世界初のリサイタル「Recital "Sky"」が、10月31日に開催される。
美術界・音楽界において前例のないリサイタル(独演会)が初公演を迎える。それが、美術家・山口和也による「Recital "Sky" at The Symphony Hall」だ。
山口は瞬間的な痕跡によって永遠性を描きだす美術家。1996年に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)を卒業。音楽家と一対一でステージに立ち、その間合いを焦点とした即興で描かれる絵画"KAKIAIKKO"で、2000年に関口芸術基金賞グランプリを受賞。副賞として滞在したニューヨークでもライブハウスや公園での即興的な作品制作や発表を行う。また日本画家・千住博から瞬間へのアプローチを評価され、依頼を受けてアトリエでの制作風景を5年間撮影し、2冊の写真集を刊行した。
16年には普照山観音寺本堂(兵庫)の天井画「鳳凰図」を制作。また18年には日本で唯一の紙祖神を祀る岡太神社・大瀧神社(福井) の「千参百年大祭・御神忌」にて「絵画点火式」を奉納。同年には一休禅師を開祖とする大徳寺真珠庵(京都)での本堂襖絵「空花」を描き、翌19年には、アルマーニ銀座タワーでのライブペインティングにて「Letter to G.A.」を制作。
コロナ禍の20年、ロームシアター 京都 メインホールでリサイタル「BLACKOUT/WHITEOUT #0」を無観客上演し、翌年には同#1を初公演した。
「BLACKOUT/WHITEOUT #0」で、ホール全体を視覚を拠り所にできない闇と光という二つの空間へ演出し、そのステージの只中に描くものを持たずに自らを立たせた山口。最初に聴こえてきた自らの足音や呼吸が起点となり、一筆目をキャンバスへ刻み、作品を生み出した。この1時間ほどの舞台を降りた後のステージに残された筆音の痕跡を山口は「絵画」と名付け、人がこの世に誕生してから去るまでのような「生きる鼓動」から直結した筆音を「リサイタル」と名付けた。
「筆音」のリサイタルに相応しい会場を求めた山口は、22年にザ ・シンフォニーホールの音楽総監督・喜多弘悦と出会い、翌年3月13日にその序章となる展覧会「絵画というリサイタル」を、同ホールでは初となる美術家の個展として実施した。その舞台挨拶で喜多から「山口さんがこのホールに立てば何か新しい芸術が生まれるのではないか」という一言があったという。ホールにとっても、美術家の試みを「聖域」に踏み入れさせる挑戦だ。その舞台でどのような筆音が奏でられ、絵画が生み出されるのか、期待が高まる。
なお、今回描かれる絵画は作家史上最大のサイズとなり、舞台いっぱいに設置されたキャンバス1点を制作する。11月17日まではクラウドファンディングで支援を募っているので、こちらもチェックしてほしい。