草月プラザで自然と響き合う音の生け花。「Keeping Flowers Alive: Acoustic Ikebana」展が開催へ
ポーランド出身のアーティスト、カタジナ・クラコヴィアク=バウカによる展覧会「Keeping Flowers Alive: Acoustic Ikebana」が、草月プラザで開催。生け花の伝統と前衛的なサウンドデザインが融合し、植物と空間が共鳴する没入型体験を提供するインスタレーションが展示される。会期は11月8日〜18日。
東京・草月プラザで、ポーランド出身のアーティスト、カタジナ・クラコヴィアク=バウカによる展覧会「Keeping Flowers Alive: Acoustic Ikebana」が11月8日〜18日の会期で開催される。
本展では、建築と音、自然が融合する同名のインスタレーションが展示。日本の伝統的な生け花と草月アートセンターの実験的精神からインスピレーションを受け、空間と音を通して生命の美と危険性を再解釈した試みになっている。
このインスタレーションは、植物の象徴的存在である彼岸花(リコリス・ラディアータ)を中心に、自然の力強さと危険性を視覚と聴覚で表現する。彼岸花は日本文化において有毒性とともに深い象徴性を持ち、クラコヴィアク=バウカはこの花の音響的特性を探求し、花が持つ美と危険の二面性を引き出した。コンタクトマイクやスピーカーを用いて、植物の微細な音や振動を増幅し、自然界が持つ独自の生存戦略や毒素を通して、自然と人間の共存についてのメッセージを投げかける。
同プロジェクトは、草月の歴史的遺産、とくに草月流の発展に貢献した女性たちへのオマージュでもある。1960年代の草月アートセンターでは、ジョン・ケージやオノ・ヨーコ、ロバート・ラウシェンバーグなどの前衛芸術家たちが実験的な表現を繰り広げたが、その背後には圧倒的多数の女性いけばな作家たちがいた。彼女たちは生け花を通じて空間に瞑想的静寂をもたらし、草月アートセンターの物理的・音響的空間を形成してきた。クラコヴィアク=バウカは、この伝統と実験的サウンドスケープを融合させ、いけばなという芸術を通じて、現代的な視点で彼女たちの役割に敬意を表している。
さらに、草月プラザのイサム・ノグチが設計した石庭は、インスタレーションの重要な要素のひとつ。庭に設置された水中スピーカーやプリーツ加工が施されたテキスタイルが庭の音響に反応し、まるで自然界のリズムがそのまま空間に響き渡るかのような没入感が来場者を包み込む。クラコヴィアク=バウカはこのようにして、視覚だけでなく聴覚を通じて植物や環境と共鳴する新しい空間体験を提供している。
草月の歴史的な遺産と未来への展望をもとにし、自然と音、建築の共生がもたらす可能性を探るクラコヴィアク=バウカの作品をぜひ会場で楽しんでほしい。